03


初めこそ怪訝そうな顔をしていた青年だったが、楽譜に目がいったことを話せば納得したように言葉を返してくれた。


「仕事柄、手に入れたものです。よろしければお貸ししますよ。」

「本当ですか?…けれど、とても貴重な物ですのに、」


声をかけたのはナマエだが、さすがに初めて言葉を交わす者から貴重な楽譜を借りてもいいものかと躊躇えば、青年は柔らかな雰囲気でナマエに声をかけた。


「あなたもこのカフェによく来ていますよね?それなら、またここで返してもらえれば構いませんよ。」


この一件以来、その青年とカフェで顔を合わす度に他愛のない会話をするようになった。同じ日本人で、家族でなく会話をしていて楽しく感じるのはナマエにとって初めての経験だった。旅行が趣味だという彼の話は、自分の知らない世界に興味のあるナマエには魅力の感じるものばかりで、いつの間にか彼と会うのが楽しみになるばかりだった。

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