一体いつになれば、彼は自由になれるのだろう。どれだけの重荷を背負うつもりなのだろうか。彼の背中の、自由の翼を見る度にそんなことを考えている。どうか、彼の重荷をこれ以上増やさないで欲しい。一緒に背負えれば良いのだが、生憎私にそんな力はなかった。
「それで、また背負い込んだんだ?」
「…なんのことだかわからねぇな。」
しれっとした顔で紅茶を啜る彼を見て、私は溜息をひとつ吐いた。
「リヴァイ班の編成のこと。」
「あれは、エレンを追い詰めるためだ。」
「自分も追い詰めているくせに。」
リヴァイ班の新しい編成を聞いた瞬間、私の胸は痛んだ。勿論、エレンのことを思っても、辛くなる。自分の同期を、また以前のリヴァイ班のように失うかもしれないという、恐怖と戦わざるを得ない状況に陥るのだから。けれど、私はその班を編成したリヴァイを思い、胸を痛めたのだった。"エレンを追い詰めるため"と彼は言ったが、それ以上に、リヴァイの方が追い詰められていると私は思う。誰よりも仲間思いで、責任感の強い彼だから。104期生の班員全員の命を背負うつもりでいるに違いない。多分、自分が死んでも、あの子たちを守るつもりでいるのだと思う。そう思うと、とても悲しくなった。
「ナマエ、余計なことを考えているだろ。」
「余計なことなんて、考えてない。」
リヴァイは本心を口にしない。勿論、弱音だって吐かない。だけど、先ほど思わず口にしていた、「俺は飛び回って人間を殺していたのか。」という一言が、頭から離れなかった。彼を絶望に突き落とす仮説。私は唇を噛み締めながら、話を聞いていた。
「ね、私もリヴァイ班に入れてよ。」
「てめぇにはてめぇの班がある。責任を持て。」
「…リヴァイの班が良い。」
「話にならねぇな。」
そう言って彼は立ち上がった。彼の言うことはご最もだし、自分の班だって大切に思っている。それでも私は、彼の背負うものを少しでも分けて欲しかった。俯いたまま、唇を噛めば、そこに皮膚が硬くなった指が触れた。
「…唇を噛みすぎだ。赤くなってる。その癖、どうにかしろ。」
「…ごめん。」
「いや、俺のせいか。」
そう言いながら、私の唇をリヴァイのそれが塞ぐ。赤くなっているらしい私の下唇を舐めるように。唇が離れれば、リヴァイは至近距離で私をじっと見つめる。
「俺は、簡単に死ぬつもりはねぇ。だからお前も、お前のすべきことをしろ。」
「…わかってる。」
そう言って、私達は再び唇を重ねる。お互いが生きていることを、これからも生きていくのだと確認し合うように。きっと近い未来、私達は同じ時を歩めなくなるだろう。どちらが先に逝くかなんて、考えたくもないけれど。それでも、生きているこの瞬間だけは、彼の痛みや苦しみを分けて欲しい。その代わり、どうか、少しでも彼に安らぎを与えてと願った。