遅すぎる初恋
我が調査兵団の兵士長であるリヴァイは、なかなか厄介な男である。粗暴で、口が悪く、その上極度の潔癖症だ。だが、誰よりも仲間思いで、強い。だからこそ、兵士長を務めているし、仲間からの信頼も厚い。彼なしの調査兵団など、有り得ない。そんな男に言い寄ってくる女性は少なくないが、それに彼が応えるのは長い付き合いだが、見たことがなかった。そんな彼に最近、恋人が出来たらしい。ナマエというその子は104期生の一人だ。年齢差のことは置いておいて、これでリヴァイの心労が少しでも癒せれば幸いだと思っていたのだが、目の前を偶然歩いていた彼女、ナマエは沈んだ顔をしていた。
「ナマエ、どうしたんだい?もう消灯の時間だろう。」
「エルヴィン団長…。」
ナマエは声を発した途端、泣くのを堪えるように俯いた。…恐らくリヴァイのことだろう。
「私の部屋においで。温かい紅茶でも淹れて、ゆっくり話そう。」
そう言って、自室に彼女を招き入れた。
「…兵長は、私のことを女として見てくれていないんです。」
「…どういうことだい?」
「だって、恋人になってひと月以上も経つのに、触れてすらくれません!」
…なんだって?思わず耳を疑った。十代の少年ならまだしも、三十路の男がどうした、リヴァイ。女性と関係を持つことも初めてなわけがない。
「好きな人には、触れたいって思いますよね?だから、兵長は私のこと、好きじゃないのかも…。無理やり付き合わせてしまっているのかもしれません。」
彼女はそう続けて、涙をポロポロ流していた。
「いや、ナマエ、それは…」
と言いかけた時、勢い良く扉が開いた。
「ちょっと聞いてよ、エルヴィン!リヴァイってばさー」
「おい、待てクソ眼鏡!…ナマエ?」
ハンジとリヴァイか。いい所での登場だ。
「やあ、こんな時間にどうしたんだい?」
「それよりナマエ、なぜてめぇはこんな時間にエルヴィンの部屋にいるんだ。」
不機嫌な様子で、彼女を問いただす彼はどう見ても嫉妬している。
「あの、それは…。」
「私が誘ったんだよ、リヴァイ。」
「俺の女に手を出すとは、いい度胸だな。来い、ナマエ。」
そう言って、彼女の腕を掴み、部屋を出ていった。多分、これで彼女の不安は解消されるだろう。まあ、手加減はなさそうだが。
「で、リヴァイがどうしたって?」
「リヴァイってば、深刻そうな顔をして、何を言うのかと思えば、"年下の女の扱いがわからねぇ"とか言い出すの!」
と腹を抱えて笑っていた。詳しく話を聞けば、十以上も年下の恋人というのは初めてらしく、大切に思うが故に、触れられずにいるらしい。そんな言い方はしていないだろうが。ナマエに相談された内容を話すと、さらに声を上げて笑っていた。
「というかさ、リヴァイが好きでもない女と付き合えるわけないのにね!」
全く、その通りだ。明日、ナマエを泣かせた罰として盛大にからかってやろう!というハンジの案に賛成したのは、言うまでもない。
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