ささやきに耳を傾けて

目が覚めたら、目の前に見覚えのある後頭部があった。

   
「……っ!!!」


ちょっと待って。これはどういう状況なんだろう。この後ろ姿、どう見てもリヴァイさんだ。どうして同じベッドで寝てるのか。全く覚えていない私は、無言で狼狽えるしかなかった。とにかく一度落ち着いて考えてみよう。昨日は大学でひたすらレポートに追われて、帰り道に…そうだ、ストーカーに遭遇したんだった。思い出すと共に、恐怖も甦り身体が震えた。


「ん…、」


少しベッドが軋んだからか、リヴァイさんの身体が動き、こちらに寝返りをうった。か、顔が近い。心臓が大きく脈打つ。そう、それでリヴァイさんが助けに来てくれたんだ。それで散々泣いて、一人になりたくないからと引き止めた。それから、「汚ねぇから風呂に入れ」と言われてその通りにして、上がってから、前にハンジさんが置いていったお酒を飲み出したんだ。「お前も飲め」と言われて、未成年だからとお断りしたら、恐ろしい目で睨まれて、渋々口にして…


記 憶 が な い 。


あまりにもベタな展開で笑えない。ちらりと自分の身体を見やり、衣服を纏っていることを確認した。どうやら、そういった間違いは起きていないらしい。まあ、そんな間違いは有り得ない。少し安堵し、目の前の顔を凝視してみる。こんなに間近で顔を見るのは、前世の彼以来だ。寝ている時だけは、眉間に皺も寄らないので可愛らしく見える。まさかまたこんなに近くで寝顔を拝めるとは思ってもみなかった。カーテンの隙間から日の光が差し込み、朝の訪れを告げていた。なんて穏やかな朝だろうと一瞬思ったが、いや、違う。記憶がないことを私は棚に上げていた。とりあえず起き上がろうと少し身じろぐと、彼は鬱陶しそうに少し唸り、目を少しだけ開いた。


「リ、リヴァイさん。おはようございます…。」


恐る恐る声をかけたと同時に、私の後頭部に彼の手が回り、引き寄せられる。


「えっ…、」


わけもわからず、言葉も発しきれないうちに、唇に温かく柔らかいものが触れた。


「…もう少し寝かせろ。」


彼はそう呟いて、また眠りに落ちた。今、自分の身に何が起こったのか把握できず、呆然とする私の前で、彼は寝息を立てている。…きっとこれは夢だ。そう思って、夢から覚めるために、もう一度私も眠ってみることにした。


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