そのままの君で

気がついた時には病院のベッドの上で点滴を受けており、自分が思っていた以上に大事になっているようで、驚いた。ベッドの脇にはリヴァイさんが椅子に足を組んで腰かけている。

「あ、あの…。」
「起きたのか。調子はどうだ?」
「大丈夫です。」
「…てめぇの大丈夫は当てにならないけどな。」

返す言葉もなかった。自分の体調管理も出来ていないくせに強がって、根拠もなく大丈夫だと言い張っていたのは私だ。ストーカーの一件に懲りず、また迷惑をかけてしまった。

「別に、怒っているわけじゃねぇ。…点滴が終われば帰っていいそうだ。」
「何から何まですみません…。有難うございます。」
「気にするな。」

くしゃりと頭を撫でてくれた彼は、立ち上がり病室を出て行った。私はふぅと一つため息を吐き、目を閉じる。体調は病院に行く前より随分と楽になった。現代の医療の素晴らしさを実感する。(なんだか年寄りくさいが。)そういえば、あの頃も体調を崩した時、顔を顰めながら看病してくれていた兵長を思い出した。

点滴も終わり、病院を出る頃には日も暮れ始めていた。車で病院に連れて来てくれていたようで、帰りも家まで送ってもらえ助かった。車を降りるとき、お礼を言おうと口を開くと、私の言葉の前に、「後でまた行く。」と彼が言い去って行った際には、その言葉の意味が理解出来なかったが、数十分後、彼は本当に現れた。スーパーの袋を手に持って。

「冷蔵庫、開けるぞ。」
「あ、どうぞ。」

普通に返答してしまったが、まだ状況が呑み込めていない。とりあえず彼に駆けよって、スーパーの袋を覗きこんだ。

「え、ちょっとリヴァイさん。この食材…。」
「病人は大人しく寝てろ。」

どうやら、ご飯を作ってくれるらしい。まず、彼が料理をするということに驚いた。

「リヴァイさん、料理出来るんですか?」
「…ナマエよ、喧嘩売ってんのか?」

そう言って作ってくれたスープは予想以上に美味しく、なんだか感動してしまった。素直に、美味しいですと伝えると、少し表情が柔らかくなった気がした。

「昨日、あれだけ寒い中突っ立ってれば風邪もひく。自業自得だな。」
「…その通りです。」

まさか、リヴァイさんに会いたくて早くあそこに立っていたなんて思いもしないだろう。そんなことは、口が裂けても言わないが。私が黙っていると、彼は少し考え込むように俯いた後、口を開いた。

「昨日の、エレン…とかいうガキはお前の恋人か?」
「は?!こ、恋人?エレンがですか?違いますよ!同じ大学に通う友人です!」
「そうか。」

私も聞いて良いのだろうか。ペトラさんのことを恋人なのかどうか。今なら、聞ける。

「あの、ペトラさん…」
「そういえば、ペトラが昨日お前を見て、可愛い可愛い騒いでたな。紹介しろって。」
「…ペトラさんの方が、100倍可愛いです。」

聞くタイミングを逃してしまった。こんな時に限って饒舌な彼だ。

「まあ、社内の野郎どもはあいつが入社してきた時に騒いでたな。」

それは当然だろう。いや、その話を聞きたいわけではなくて…。しかしもう手遅れだ。

「あいつとは別になんでもねぇよ。」
「え?」

私は今、口に出していただろうか。いや、そんなはずはない。

「そ、そんなこと聞いてないです!」
「聞きたそうな顔をしてたがな。気のせいか。」

そんな飄々とした口ぶりでとんでもないことを言う彼に、開いた口が塞がらない。そのまま固まってしまった。どう言葉を返したら良いのかわからず、黙ってスープを口に運んだ。そんな私を見て彼は、「相変わらず素直じゃねぇな。」と笑った。


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