世界が色づく瞬間

人を好きになることは、本当に素晴らしいことだと思う。相手の一言や些細な行動に一喜一憂し、その人がこの世界に存在するという事実だけで、世界は不思議なほど色鮮やかになる。そう気がつかせてくれたのは、彼…リヴァイさんは勿論だが、周りの人たちでもある。私は本当に恵まれている。前世でも現世でも。


「ナマエちゃん、リヴァイさんのことが好きなんでしょう?」

カップを両手で持ったまま、脈絡もなしに突然ペトラさんから紡がれた一言は衝撃的だった。今日は彼女からのお誘いでお茶をしている。彼女とこちらで会ったのはこれが二度目(一度目は雪のあの日だ。)で、メールで数回やり取りはしていたのだが、そんな話はしていない。

「え、え?!」
「顔が真っ赤。わかりやすいなぁ。」

笑いながらそう言うペトラさんはやっぱり可愛くて。同性ながら見惚れてしまう。私が男の子なら間違いなく惚れているだろう。そんなことを考えていると、彼女はテーブルにカップを置いた。

「誤解されちゃったかな、と思っていたの。この間、初めて会ったとき。ナマエちゃん、そんな顔してたから。」
「…酷い顔してました?」

自分では気づいていなかったが、初対面の人にそう思わせるほど、顔に出てしまう私は問題なのではないだろうか。

「酷い顔じゃなくて、ショックを受けた顔というか…。だけど、今日の顔からすると、誤解は解けてたのかな?」
「…リヴァイさんから聞きました。」
「直接聞いたの?!すごい!」
「いや、聞きたそうな顔をしてるって言われました。」

どれだけ顔に出しているんだ、私は。なんだか恥ずかしくなってしまう。今までそんなことを言われたことがなかったので、恐らく彼に関して特に感情の起伏が激しく表に出てしまっているのだと思う。

「なら、良かった。あの日、リヴァイさんも不機嫌になって大変だったんだから。」

そんなつもりはないのだろうけど、と続けた彼女の顔は、なんだか切なげで。やはり彼女もリヴァイさんが好きなのだと思った。

「…ペトラさんも、」
「うん。私もリヴァイさんが好きよ。」

そこからの彼女の話は、なんとも複雑だった。会社に入社して出会った時から何故か惹かれたこと。直属の部下になり、この人にずっとついていきたい、力になりたいと思ったこと。それが恋愛感情なのかそうでないのかわからないこと。

「でも、やっぱり恋愛感情ではないのかも、とこの間、思ったの。」
「…何故ですか?」
「ナマエちゃんへの態度を見て、あぁ、そっか。って自分で納得出来ちゃったから。」

私と彼は、今はなんでもないのだけれど。臆病な私は、気持ちを伝えることすら躊躇っているというのに。

「自分でも不思議なんだけどね、何故だかリヴァイさんには幸せになって欲しいと強く思うの。それと同時に、幸せに出来るのは私じゃないのがわかる。」
「…どうしてそんな話を私に?」
「どうしてかな。それもわからないの。…ナマエちゃん、彼のことが好き?」
「…はい。好きです。」

なら良かった、と言う彼女はより一層綺麗に見えた。彼が好きだと口に出したのはこれが初めてで、その言葉を発した瞬間、またも周りの景色が色を変えた気がした。あれだけ前世で気持ちを伝え切れなかったことを後悔したのに、また私は同じことを繰り返そうとしているではないか。今、気持ちを伝えたいと思う人はちゃんと存在しているというのに。伝えることが出来るというのに。

「ペトラさん、ありがとうございます。」

彼女と話して、気持ちを伝えなくちゃ、伝えても良いんだ、と思えた。返事の代わりに、にっこりと笑ってくれた彼女につられて、私までも頬が緩んだ。


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