偽れない気持ち
無言のまま、私たちは向かい合っていた。どれだけ考えても、やはり私の答えはただ一つで。それを彼にどう伝えるべきなのだろう。傷つけたくないと思う。けれど、それは無理な話だ。自分勝手甚だしい。「エレン、ありがとう。気持ちは凄く嬉しいよ。だけど…やっぱり私は、」
「すぐに俺を選んでくれとは言わない。ナマエが納得するまでリヴァイさんを想えば良いと思う。だけど、俺の気持ちは知っておいてくれ。ナマエがリヴァイさんを想うように、俺にとってはナマエが特別なんだ。」
まるで私の返事がわかっていたかのように、表情を変えずに話すエレンは、いつもより大人びて見える。彼が私のことをそんなに大切に思っていてくれたなんて、気がつきもしなかった。私は、自分のことばかりに必死で、周りに目を向けることが出来ていなかったのだ。気持ちは本当に嬉しい。けれど私は、どうしたってリヴァイさんでなければ駄目なのだ。たとえ振り向いてくれなくても、それでも彼を想っていたい。この先もずっと、気持ちは変わらない。
「そろそろ帰るか。」
そう言われて時計を見ると、この大学内のカフェテリアも、もうすぐ閉店の時間だった。夕方まで降り続いていた雪は止んでいたが、道は真っ白なままだ。日が落ちて気温も下がり、外に出ると思わず身震いした。
「こんな時間まで付き合わせてごめんな。」
「話してくれてありがとう。聞けて良かった。」
エレンはこんな雪の中、自転車で来ていたらしい。危ないなあ、と言えば、「これくらい、大丈夫だ。」と言われてしまった。私だったら確実に転んでしまう。彼は自転車を押して、私を駅まで送ってくれようとしていた。申し訳ないなと思いつつも、甘えることにした。いつものように会話は弾まなかったが、不思議と気まずくはない。エレンの醸し出す雰囲気が、たとえ無言でも落ち着くのだ。だが、この優しさにいつまでも甘えるわけにはいかない。駅の近くの交差点までたどり着く。ここを渡ってしまえば、すぐに駅だ。
「もう、ここで大丈夫だよ。ありがとう。」
「気をつけて帰れよ。」
「うん。エレンもね。転ばないでよ?」
「お前みたいに抜けてないから大丈夫だよ。」
ひどい!と口をとがらせると同時に、歩行者用の信号が青に変わる。
「じゃあ、またね。エレン。」
「あぁ。またな!」
そう言ってエレンに背を向け、横断歩道を渡る。渡り切ろうとした時、なんとなくまだ視線を感じる気がして振り向けば、やはりまだエレンがこちらを見ていた。手を振ろうと腕を上げると、エレンの顔が笑顔から瞬く間に真っ青な顔になる。不思議に思うと同時に、エレンの叫び声が聞こえた。
「ナマエ!!」
その声が聞こえるのと同じくして身体に強い衝撃を感じ、目の前は真っ暗になった。