君を守ると誓う

漸く病院に着いた私たちは、車を降り、急いで受付へと向かった。彼女の名前を伝えれば、病室を教えてもらえ、命があるということを知り幾分か安堵した。それでも今ナマエがどういった状況にあるのかわからないままだ。教えられた病室へと不安と緊張を抱えたまま足を運ぶ。面会時間が過ぎていることもあり、病院内の照明はやや暗めでよりいっそう不安な気持ちになる。病室の前にたどり着くと、そばのベンチに座るエレンが目に入った。

「エレン!ナマエ、ナマエは?」
「ハンジさん、エルヴィン団長に兵長まで…!」
「おい、エレンよ。ナマエはどうした?早く答えろ。」

リヴァイは苛立った様子でエレンに問う。そういえば、エルヴィンとリヴァイに会うのは、これが初めてのはずだ。団長と兵長と呼んでしまっているが、訂正する時間も惜しいのだろう。勿論、私も同じ気持ちだ。

「無事です。命に別状はありません。…ついさっき、意識も戻りました。」

エレンの話によれば、スリップした車がナマエに向かって突っ込んできたらしい。身体を強く打っており、意識もなかったそうだが先程気がついたそうだ。

「そうか。ならエレン、何故君はそんなに浮かない顔をしているんだ?」

エルヴィンの問い掛けに、エレンは俯きがちに答えた。

「…命は助かりました。それは本当に良かった。けど、ナマエには記憶障害が起きているみたいで。」
「…どういうこと?」
「あいつ、自分の名前すら覚えていないんです。前世のことも、現世のことも。」

その言葉を聞いた瞬間、時間が止まったような錯覚に陥った。記憶がない?このタイミングで?やっと、やっと幸せになる準備が整ったというのに。この世界まで、神様はナマエ達に微笑んでくれないのか。なんて残酷なのだろう。医師の話によれば、一時的なものだとは思うが、記憶が戻るのは明日かもしれないし、何年も先かもしれないらしい。結局のところ、わからないのだ。

「彼女のご両親は?」
「ナマエの意識が戻ったので、入院の手続きだとかをしているみたいです。」
「あいつはここにいるんだな?」
「はい。」

エレンの返答を聞いたリヴァイは、病室のドアへと手をかけた。

「ちょっと、リヴァイ!会ってどうするの?」
「さあな。だが、会わないとどうにもならんだろ。」

そう言い放ち、躊躇いなく扉を開いた。その先には、痛々しく腕に包帯を巻き、ベッドの上で窓の外を見やるナマエの姿があった。リヴァイはずかずかと病室に入り、ベッドの前に立つ。ナマエは驚いたように振り向いた。

「…あの。」

困惑した表情のナマエは、か細い声を発した。やはり、まだ会うべきではなかったのではないか。そんなことを思いながら、扉のそばで様子を伺っていれば、突然リヴァイはナマエと目線を合わせるように腰を落とした。

「身体は大丈夫か?」
「あ、…はい。大丈夫です。あの…お知り合い、なんですよね?」
「あぁ、そうだな。お前のことは昔からよく知っている。」
「…すみません。私、記憶がないみたいで…。」

そう言って、申し訳なさそうに伏し目がちに話すナマエの頬に、リヴァイが優しく触れた。その行動にナマエは驚いた様に目を開いた。

「そうらしいな。だが、何も問題ない。俺はリヴァイだ。ナマエよ、困った時は俺を頼れ。いつでも力になる。いいか、記憶がなくても関係ねぇ。そう教えてくれたのはお前だ、ナマエ。」
「私が…ですか?」
「あぁ。そうだ。」

リヴァイを真っ直ぐと見つめるナマエ。彼女の瞳に、彼はどう映っているのだろう。そして、彼はどんな顔で彼女を見ているのだろうか。こんな時に不謹慎かもしれないが、お互いを見つめているであろう彼らを、美しいと思った。あの頃のように儚げでいて、そして美しいと。この先彼らにはどんな未来が待っているのだろうか。どうか、笑顔溢れる未来であって欲しいと、切に願う。


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