指先に触れた未来

「うっ、重たい…。」


私は今、クーラーボックスと戦っている。参加させてもらったからには働かなくてはと、近くにあったソレを運ぼうと持ってみたはいいものの、予想以上に重たかった。運んでくれと言われたわけでは決してない。クーラーボックスと共に、待っていてくれと言われたのだが、私が運べばいいじゃないか!と意気込んでみればこれだ。


「いや、私なら運べる!これくらい!」


気合いを入れて持ち上げた瞬間、ふわりと右肩にかかっていた重みがなくなり、突然のことで身体のバランス崩した。前のめりになり、転ぶ!と思いぎゅっと目を瞑ったが、強い力で腕を引っ張られ、転倒を免れた。


「何してやがる。」


後ろを振り向くと、クーラーボックスを肩に掛けた、リヴァイさんが私を支えてくれていた。


「すすす、すみません!」


「運んでくれと頼んだ覚えはないが。」


「…勝手にすみません。何かしなくちゃと思いまして…。」


やってしまった。働こうと思った矢先に、迷惑をかけているではないか。しゅんと項垂れていると、ビニール袋を差し出された。


「ガキが気を遣わなくていい。これでも持ってろ。」


そう言って手渡すと、前を歩いて行った。袋の中身は紙コップやら紙皿で、勿論全く重たくない。お礼を言っていないことに気がついた私は、慌てて彼を追いかけ、服の裾を引っ張った。


「あのっ、ありがとうございます!」


怪訝そうに振り向いた彼だったが、私がそう言うと、少し驚いたような顔をした。


「どうかしました?」


「…いや。何もねぇ。」


そう答えて、また歩き出した。初対面の私にまで優しいんだなとなんだか嬉しくなり、自然と頬が緩む。ちゃんと話せたのは初めてだった。純粋に、"今"の彼を知りたいと思った。


「おい、何をにやけている。」


「な、なんでもないです!すみません!」


慌てて無理やり表情を引き締めると、ふっと彼が笑った気がした。


「なあ、」


そう声をかけられ、彼の顔をもう一度見ると、笑顔はやはり気のせいだったようだ。


「俺と、お前の知り合いとやらは、そんなに似ていたのか?」


真剣に問われているのだとわかり、心臓がドクリと高鳴る。恐らく彼は何かを察しかけている。その何かを悟らせては駄目だ。


「いいえ。よく見たら、全然似ていませんでした。私の勘違いで、ご迷惑をお掛けしました。」


「…そうか。」


納得してはいないようだが、これ以上問われることはないだろう。これでいい。リヴァイさんのためにも、私のためにも。私はこれから、"今"を大切に生きなければならない。彼を見て、そう思えた。


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