夢と現実の狭間で
久しぶりに昔の夢を見た。リヴァイ兵長と出会った時の。私はまだ訓練兵で、トロスト区奪還作戦後の巨人掃討の任務に就いていた。ほんの一瞬、疲れからか気を抜いていたのかもしれない。奇行種がこちらに走って来たにも関わらず、反応が遅れ、恐怖で身体が動かなかった。「あ、死んだ。」冷静にそう思い、目を閉じた。私は、生きることを完全に諦めていた。視覚がなくなると、聴覚がより研ぎ澄まされる。巨人の近づく音が大きくなると同時に立体機動装置特有のワイヤー音が聞こえた。目を開くと巨人の手が私に向かって伸びてきており、掴まれる寸前で、大きな斬撃音と共に巨人が崩れ去った。状況が把握出来ずに呆けていると、巨人の背中から人影が降りてきた。「何勝手に死のうとしていやがる。てめぇの心臓は誰のもんだ。」
知らない声でそう声をかけられ、顔を見て驚愕した。
「…リヴァイ兵士長。」
私を見下ろすその姿から目を離せなかった。人類最強と呼ばれる彼を間近で見たのは初めてで。他の兵士とは異なる佇まいに、なぜ彼が人類最強と謳われるのか少しわかった気がした。
そこまでで目が覚めた。あの時のことは鮮明に覚えている。私にとって、彼はいつでもヒーローだった。そんな彼に少しでも追いつきたくて、調査兵団に入り死にものぐるいで努力した。
「懐かしいなー…。」
きっと、こんな夢を見たのは、こちらの世界でリヴァイさんと出会ったからだ。バーベキューの後も数回、エルヴィンさんやハンジさんに誘われてご飯を食べに行ったりしている。その場には勿論リヴァイさんもいて、少しずつだが自然に話せるようになった。家もそこそこ近いらしく、一緒に帰ることも多かった。その際に一人暮らしだと話の流れで伝えると、「一応、登録しておけ。」と連絡先を教えてくれた。顔に似合わず世話焼きな性格は健在らしい。それにしても、なんて便利な世の中だろうか。携帯電話があれば、いつでもどこでも連絡をとれてしまうなんて。連絡先を教えてもらったものの、一度もかけてはいない。用事もないのにかけられるはずがない。それでも、自分の携帯に彼の連絡先が入っているだけで嬉しかった。これはやはり恋心なのだろうか。それとも、まだ過去の彼に縋っているだけなのだろうか。自分の感情すらよく理解できない。この曖昧な気持ちのままの方が良いのかもしれない。そんなことを思いながら、気がつけば夏も終わりに近づいていた。