恋い焦がれた未来を
「リヴァイさん、リヴァイさん!茄子が切れました!」
「そうか。なら次は湯を沸かせ。」
「はーい!」
今日は久しぶりにゆっくりと一緒に過ごせる休日で、「何がしたい?」と聞かれたので、リヴァイさんにご飯を作って欲しいとリクエストしたのだ。最初は嫌そうな顔をしていたが、どうしても、とお願いすれば、渋々承諾してくれた。勿論、私もお手伝いをする。だって、一緒に並んでキッチンに立ってみたくてお願いをしたのだから。
「お前が作ったほうが美味いのにな。」
「そんなことないです。リヴァイさんが作ってくれたスープ、とっても美味しかったですもん!」
「風邪引いて味覚なんかわかるか。」
「あ、ひどい!」
口先では悪態をついているが、うっすらだが頬を緩ませて話しているリヴァイさんを見て、私は嬉しくなる。こんなに幸せでいいのだろうか。私は、彼といると頬が緩みっぱなしだ。
「相変わらず、にやけた顔をしているな。」
「だって、嬉しいんです。一緒に並んでキッチンに立つのに憧れていて…。なんだか新婚さんみたいじゃないですか?」
そう言葉を発した後、私は何を言っているんだと恥ずかしくなった。さすがに浮かれすぎている。
「す、すみません!あの、」
「そうだな。こういう未来も悪くない。」
「…え?!」
あまりに予想外の言葉が返ってきて動揺せずにはいられない。リヴァイさんの顔を見れば、平然とした顔でパスタのソースを作っている。やっぱり、料理をしている姿も格好いい。…ではなくて、どうしてさらっとあんなことを言えるのだろうか。私は動揺したままだが、平然を装って料理をするふりをした。
「…っ!」
だが、それが裏目に出たのか、お湯に塩を入れようと手を伸ばした時、誤って鍋に触ってしまった。
「おい!ナマエてめぇ、何してやがる。」
手を掴まれ、鍋が触れた部分を眉間に皺を寄せて見るリヴァイさん。
「こ、これくらいなんてことないですよ?」
「チッ。黙ってさっさと冷やせ。火傷は残る。」
無理やり引っ張られ、冷水にさらされる私の手。本当に大したことない。少しだけ赤くなっている程度だ。
「大げさです、リヴァイさん。」
「女は傷なんて残すもんじゃねぇ。」
「あの頃なんて、生傷絶えなかったんですから、今なんて全然…。」
そう言いかけると、掴んでいる私の手を、更に力を入れて掴む。
「あの頃だって、お前に傷一つつけたくなんてなかった。」
ぼそりと呟く彼を見れば、珍しく恥ずかしそうに、目を逸らす。なんて貴重な表情を拝めたのだろう。嬉しくて、彼の顔をじっと眺めていれば、突然私の後頭部に手を回し、唇を塞がれた。
「んっ…、待って、」
「…はっ、うるせぇ。少し黙ってろ。」
そのまま唇を重ねていれば、焦げたような臭いが充満してきた。
「あ、ソースが…!」
私がそう口にすれば、リヴァイさんはため息を吐きつつコンロの火を止めた。
「ムードもクソもねぇな。」
「…すみません。」
けれど、折角のパスタが台無しになってしまうのは見過ごせないではないか。甘い時間も大切だが、ランチの時間だって大切なのだから。それに、このまま口付けを受け入れてしまえば、ランチどころではなくなってしまう。
「…仕方ねぇ。とりあえず飯を食うか。」
「はい!そうしましょう!」
「…その後は、わかってるな?」
そんなことを言われてしまえば、一気に顔に熱が集まる。
「わ、わかりません…。」
「そうか、なら、嫌って言うほどにわからせてやる。」
そうニヤリと笑って、リヴァイさんは料理の仕上げに取り掛かった。