‐フロイドside‐
「ねーねー。アズール〜、ジェイド〜。この文字誰のかわかる〜?」
今日のモストロ・ラウンジでの仕事が終わり、いつもの三人で夕飯を食べている時に手紙を広げた。昼間に小エビちゃんから預かった……もとい貰った差出人不明の手紙だ。
アズールとジェイドは、テーブルに置いたそれをしげしげと眺める。
「呼び出しの手紙ですね。お前が貰うとは珍しい」
「オレじゃねぇよ。貰ったのは小エビちゃん」
「……確かに、封筒はユノさん宛ですね」
「何故それをお前が?」
「昼休みに小エビちゃんとこ行ったら、この手紙の差出人わかんねぇっつってたから貰ってきた」
「なるほど」
アズールはスプーンを置いて手紙を手に取る。
普段から生徒との契約で大人数の筆跡を見ている二人のことだ。見たことある可能性が高いだろうと思って持ち帰ってきたのだが、流石に今すぐ特定はできないだろう。
「差出人不明でユノさんを呼び出しですか。それで、彼女は応じたんですか?」
「行くわけねぇじゃん。小エビちゃん滅茶苦茶警戒心強ぇもん」
学園で小エビちゃんの姿を見かければ、常に小エビくんやカニちゃん、サバちゃん、アザラシちゃんがいる。たまーにウニちゃんが混ざってたりもするけれど、小エビちゃんが一人になることは極稀だ。
小エビちゃん自身が一人になるのは危険だとわかっているし、なによりカニちゃんたちも小エビちゃんが置かれている状況を理解しているから意図的に離れないようにしている。
この間の勉強会の時だって、たまたま他と都合が合わなかっただけなのだろう。一人になるにしても人通りが多い中庭にいたし、あれ以来小エビちゃんが一人でいるところは見たことが無い。
「指詰められたくねぇから行かねぇってさ」
「クッ……ふふっ! ユノさんはそっちの発想に行ったんですか」
「そぉ〜、面白いよね〜」
「まったく。女性ならラブレターと勘違いして少しくらいときめいても良い気もしますが……。ま、彼女にとって窮屈なこの環境では、警戒し過ぎている方が身のためですね」
雄だらけで、しかもいつ発情したっておかしくないような野郎がごろごろいる。小エビちゃんが迂闊に一人で出歩いたら、何をされるかわかったものじゃない。
「で、差出人が誰なのかでしたね」
「そー。ノートの切れ端で呼び出すとかさぁ、いくら雄ばっかでも女の子にそんなラブレター書かねぇと思うんだよねぇ」
相当な金欠ならまだしも、好きな子が相手なら便箋に書くだろう。普通。
金欠でもさすがに切れ端は無いか。
あー、でもサバナクローならやりそう?
ウニちゃんは絶対可愛らしい便箋に書きそうだけど。
「ラブレターという線を外すと、ユノさんに恨みを持つ誰か……という可能性もありますね」
「或いは、彼女を囮にして周囲の人物へ牽制をかけるつもりか……。良いでしょう。明日の午後までには特定してみせますよ。最近フロイドがお世話になっているようですし、対価はお安くしておきます」
「さっすがアズール〜!」
好意なのか、悪意なのか。
どちらともつかない手紙の差出人が誰なのか。小エビちゃんに頼まれたわけではないけれど、オレはどうしても知りたかった。
教室で手紙を見た時の何とも言えない不快感。小エビちゃんが応じないとわかってほっとしたけど、嫌な予感は拭えなかった。
(俺こーゆーの考えんの苦手だからなぁ。何も起こんないといーんだけど……)
怪しい奴見つけたらとりあえず絞めるか。
小エビちゃんと同じく物騒なことを考えながら、残りの夕食を腹に納めた。
「にしても、フロイドがここまで長続きするとは思いませんでしたよ」
「僕も同感です。またすぐ飽きるかと思ってたんですがねぇ」
「あはっ、オレも超ビックリしてる〜。小エビちゃん面白いんだもん」
「はぁ……。他の誰かに取られる前には決着つけてくださいね。どっちに転んだとしても、それが対価です」
「はぁい」