「お時間を頂いてもよろしいでしょうか呉子殿」
「?は、はぁ、」
愛武器である双刀を握りしめて、ひたすら鍛錬に打ち込んでいる今。
額から流れてくる汗をぬぐっていたときにちょうどよく声をかけてきたのは何故か怒った顔をしている姜維さん。
怒っているとうか……、少し難しい顔をしているだけなんだけど。
「なんです――」
「幸村殿に槍の御教授をしてもらっていたそうですね」
「あぁ、はい。つい昨日ですけど」
前開かれた大宴会の席で、幸村さんが槍裁きを教えてくれると言ってくれたから、ありがたく昨日の鍛錬の時間に教わった。
それと姜維さんが小難しい顔をしてることとなんの関係が……?
(というかこの人今遮って来たよ)
「何故槍裁きを?あなたの武器は双刀でしょう」
「長柄に興味があったから、槍も使えるようになったらいいなぁって」
「ダメですかね」と苦笑いをしてみたら、なんと姜維さんの表情が難しい顔から険しい顔になっていた。(あれなんで!?)
「わざわざ幸村殿の時間を割かずとも、槍の使い手はもっと他にいたでしょう」
「っ、」
声を荒げた姜維さんに、肩がビクッと跳ねてしまった。
よく心配されることはあるけど、怒られたのは初めてだ。
「(っていうかなんで今私怒られて……)」
「……何故私に聞かなかったんですか」
「え、」
「槍なら私も得意としています。それは呉子殿も十分ご存知なはず」
「あ、あぁ」
思わず手をポンと叩いてしまった。「なんで今手叩いたんですか」
「で、でも幸村さんと姜維さんの型じゃ違いますし、」
「それでも槍に変わりはない!」
「そーですけど……」
なんだか唇が尖ってきた気がする。なんというか、面白くない。
なんで姜維さんがそこまで怒っているのかまったくわからないのにどうにも理不尽に怒られてる気しかしない。
そんな私の表情に気づかないのか姜維さんは「ともかく」と続ける。
「今後槍の稽古をする場合は私に一声かけてください」
「でも姜維さん、なんか忙しそうじゃないですか最近」
「忙しくてもあなたの願いならそちらを先に優先します」
「諸葛亮さんのおつかい中でもですか?」
別に意地悪を言いたくなったとかそういう他意はなく、それとなく気になったことを聞いただけなのだがまたもや難しい顔をし始めてしまった姜維さん。
そこはぜんぜん諸葛亮さんを選んでもらっても良かったんだけどそんなに悩むところなんだろうか。
あまりにも深く悩んでいるから、「冗談です」と言おうとしたのだけれど。
「いや、他の男と二人きりになられるくらいならば丞相の使いの最中であっても呉子殿の願いを聞き入れよう」
「へ、」
ガシッ!と両手を掴まれて「では始めましょうか」とニコリ笑われ、そのままどこかへ歩き出す姜維さんに、私は頭がついていかずに「え?え?」としか言葉が出てこない。「さぁ、」
鍛錬をしましょうか
「ちょ、姜維さんなんでこんな体制なんですか?」
「まずは構えから覚えるのが一番だと思いまして。何かご不満が?」
「(近いですとても!)な、何も後ろから支えてもらわなくても言葉で言ってもらえれば、」
「言葉よりも体に覚えさせた方が早いですから」
「(だからってなんで布陣から離れたところでやってるんだろう)」
「私以外のことを考えないでください」
「あ、すいません……。(ん?)」
今謝るところだっただろうか……。
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