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うげええ!あちらさんポケモンバトルやる気満々じゃないか!しかもこっちが悪役的な何かであることは明白。あーもうテイのカバ!
下を見下ろすとテイは木に登って来ようとしていた。ニイが早く早く!とテイを呼ぶ。
そうだ。早くテイを連れて逃げないと…!

「ブラッキー、サイコキネシスだ!」

少年の声がしたと思ったとたんに、ぐにゃりと景色が歪んだ。よろけて落ちそうになり咄嗟に木に抱きつく。目眩のような何かに顔を歪め、ぎゅっと目をつむる。
あ、テイは。気になって片目を薄く開き、ちらりと下を見ると、テイは頭を抱えてうずくまっていた。

「ぴ、ちゅ…」
「テイ…!」

小さく叫んで、ゆっくりと枝にしゃがむ。落ちないよう安定した態勢をとり、ニイを肩からおろした。小さなチカやニイは足元の太い枝に捕まっていれば充分らしく、腹這いになって木にしがみ付いている。ブラッキーのせいでぐにゃぐにゃ歪む視界に耐えながら、枝に腹這いになって身を乗り出し、出来る限り地面へと手を伸ばした。

「ここまで上がっておいで!早く!」

少年側に聞こえないよう小さく、けれどテイに届くように鋭く声をあげる。逃げなくちゃ。例え話せば攻撃を止めてくれるだろうとも、私達は一応、追われているらしいのだから。

「テイ!」

テイは固く閉じた瞼をうっすらと開く。

「電光石火!」

少年の声が響いた。視界に黒い影が現れたと思ったとたん、テイが空中に投げ出される。小さなその体にハッと目を見開いた。
落下して地面にぶつかり、飛ばされた勢いで転がっていく。ただの電光石火でも、小さなテイの体、ましてや強いポケモンにやられた攻撃は、多大なダメージを与えた。
倒れていたテイは四肢にぐぐっと力を入れ、震えながらも立ち上がる。そしてパチ、と一瞬頬が電気を帯びたかと思うと、全身から電気が放たれブラッキーに襲い掛かった。それを避けられず浴びたブラッキーは、やはりレベルの違いなのか、残った電気をパチッと体に弾けさせながらもしっかり立っている。対してテイはふらふらと足取りが覚束ない。
あ!そうか、ピチューは電撃を扱うのが下手だったっけ!
どうしようどうしようと焦りながら対立する二匹をおろおろ見つめる。私がいっても意味がない。ブラッキーに対抗する力も逃げる力も持ってないから。けどそれなら、と伸ばしたままだった手を引っ込めて隣にいるチカを見る。

「チカ、頼んでいい?」
「ピカ!」

チカは力強く頷いて、木から飛び降りた。先ほどのサイコキネシスのダメージは、チカにとってあまり問題ではなかったらしい。そして、くるっと空中で回転して鉄みたいに硬くなった尻尾をブラッキーに振り下ろす。突如現れたもう一匹の敵に、ブラッキーは咄嗟に身を引いたものの、対応しきれずに少し擦ったようだった。ひるんだブラッキーを見て、すかさずチカはテイに駆け寄り、力加減したアイアンテールでテイを空中へ弾き上げた。ぽーんと飛んで来たテイを慌ててキャッチする。ナイスチカ!
それを確認して、チカはブラッキーに電撃を食らわせる。ダメージは無さそうなのにふらりとよろめいているのを見るに、チカが放ったのは電磁波だったようだ。チカは痺れているブラッキーから目を離し、一声鳴いて駆け出した。その逃げようという声にハッとして、テイをしっかり抱え直し、ニイを先に走らせてその場を後にした。




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