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二十分ほど経つと、立ってもふらつかなくなった。なので、ご飯を食べに行こうとチカとニイに声をかけると、遊んでいた二匹はひょこひょこやってきて私の足を触って見上げてきた。

「ピチュー?」
「ん?もう大丈夫。ありがとうね」
「ピッカ!」
「さて、美味しいもの食べに行こうか」

そう言うと二匹は目に見えて顔を輝かせた。早く行こうと催促するチカとニイに笑いながら、扉をあける。廊下に出た二匹に続いて外に出ると、どっち?とチカがこっちを振り返った。…はて、食堂はどっちだろうか。
パンフレットに場所を書いていなかっただろうかと、室内に戻ろうとすると、靴を引っ張られた。下を見ると、チカがニイの方を指さしている。なんだとニイを見ると、鼻をひくひくさせて少しずつ前へ進んでいた。
そうだった。ニイは食いしん坊だったね。

「ピカ」
「うん、ニイに任せたらよさそうだね」

くんくんと匂いを嗅ぎながら前進するニイの後をついていく。ただ今ジョーイさん不在のカウンターを通り過ぎてしばらく歩くと、人のいる大きな部屋に辿り着いた。いい匂いがする。ここが食堂のようだ。
ぴょいっと肩まで駆け上がってきたニイを乗せて、料理を提供しているカウンターに向かう。カウンターの隣にあった食券販売機、そのまた隣にレプリカの料理や写真があって、どんなものがあるのかとじっくり眺める。
……カレー、食べようかな。当分食べてないし。
バイキングが主なようだけど、カレーの写真を見たらカレーが食べたくなってしまった。バイキングは明日の朝にしようっと。
今見ているとなりには、また別の様々な素材を使ったカラフルな料理の写真やらレプリカが並べてあり、そっちはポケモン用の食べ物を売っているようだった。

「二人は何が食べたい?」
「ピチュ!」

肩から身を乗り出してニイが指したのは、電気タイプ専用フーズ大盛りセットだった。セットということでついている木の実で作られたポフィンとポロックもついているらしい。さすがニイ、いいものに目をつけている。
足元にいたチカがぐっと首を反らせて写真を見ていたので、脇に手を入れて抱き上げる。

「ピカチュ」
「どういたしまして。チカは?」
「ピカ」

これ、と指したのはニイと同じ物の並盛セットだった。

「了解。じゃあ頼みに行こうか」

チカを抱きなおして、カウンターに向かう。そこにいた人に注文して、すぐに出てきたチカとニイの料理を持ってどこに座ろうかと視線を巡らせた。窓際の席が空いているので、そこにいこうかと二匹を引き連れて席に行く。ポケモンフーズセットを机に置いて、自分のカレーを取りに戻ろうとカウンターに引き返しているその途中、近くを通る人の視線がこちらを向いているような気がして、ハッと気が付いた。
たぶん、この恰好が人々の視線を集めているのだ。それを自覚した途端頬が熱を持って、顔が見えないようにぐっと深くフードを被る。けれど、それは逆にピカチュウの耳が付いていてさらにピカ服だとアピールしていることに気が付いて、すぐに脱いだ。横髪をかき集めて必死に顔を隠しながら、うつむいて足早にカウンターに行ってカレーを受け取った後、即行で席に戻る。
まだ夕飯には少し早い時間だからだろうか、食事をとる人はまばらだったのが唯一の救いだった。





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