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ぽっぽーと、ポッポが鳴いた。いつもとは違う寝床の感覚に、閉じていた瞼を上げる。朝の冷たいそよ風がやってきて、はだけた浴衣からのぞく素足をなでた。傍らに眠るチカとニイを確認して、視線を上に向けたところで、ないはずの天井が視界に入り、一瞬にして今の状況を理解した。
むくりと起き上がると、弾力のあるベッドに膝が沈んだ。
……ちょっと肌寒いな。タオルケットくらい掛けて寝れば良かったかも。
大きなあくびと共に伸びをひとつして、壁に掛かっている時計に目をやった。時刻は6時過ぎ。ここのところ時計に合わせた生活をしていなかったので、特に何も思わなかった。カーテンの隙間から陽の光が差し込み、微かに開けておいた窓からは外の空気が運び込まれる。うん、いい朝だ。
ベッドから降りて窓に近付き、シャッとカーテンを開け放つ。とたんに降り注いだたくさんの陽の光に、ベッドに転がっていたチカが目を覚ました。ニイは小さく呻きながら、側にあったタオルケットを掴んで、頭からそれを被った。

「おはよ、チカ」
「…ピカチュ」
「ニイは相変わらず寝起き悪いね。寝心地のいいベッドだから余計にかな」

タオルケットの下にいるニイに声をかけたが、小さく唸るばかりで起きようとしない。タオルケットの端を掴んで、そろりと持ち上げると、ニイはタオルケットを取り戻そうと両手をのばして転がりながら、陽の光から逃れようと、ぎゅうと目を瞑っている。

「ほらニイ、朝だよ」
「…ぴぢゅー……」
「ピィカー」
「……ぴぃー…」
「早くテイを迎えに行って、美味しい朝ごはん食べるんでしょー?」
「…ピチュ!」

美味しい朝ごはん、の言葉に、ニイはパチッと開眼した。どんな状態にあっても食べ物の話に食い付くのは、ニイのお約束である。
ようやくニイも起床し、二匹が洗面所で身繕いをしといる間、私は浴衣から洗濯して干しておいたピカ服に着替えた。びしょ濡れにして干した服は、夜風と朝の太陽の熱によってちゃんと乾いていた。もし一晩で乾かなかったらどうしようと心配していたので、ホッと安心した。
脱いだ浴衣をどうすればいいか分からなかったので、綺麗に畳んで机の上に置いた。それから水をつけた手を丸めて、猫のように顔を洗っている二匹の間に入り込んで顔を洗う。髪の毛はあちこちにぴょんぴょんと跳ねているが、ボサボサなのは今さらなので特に直そうとは思わない。だけどここは人がいる所なので、水に濡れた手で髪の毛を撫で付け、気持ち少しだけ整えた。タオルで顔を拭いてさっぱりしたところで、チカとニイに声をかける。

「よし、テイを迎えに行こうか」





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