25
外に出ると、日射しが強くて思わず目を細めた。普段ひんやりとした薄暗い森暮らしのおかげで暑さを感じたことはなかったが、じりじりと照る太陽に、今は夏だということを再確認させられる。
時間帯は十時くらい。人通りはなかなかだ。出来るだけ人通りの少ない道を歩いて帰ろう。すっかり忘れていたが、今の私はピカ服装備だ。人目に晒され過ぎてちょっとどうでも良くなってきたけれど、それでもびしびし感じる視線を無いものとして何でもない顔をするのは流石にキツい。
細い道を、と大通りから脇に逸れた小道を行く。脇道といっても、道端に家が建っているし、小さな店もぽつぽつとある。
道の端を歩いていると、時折、木陰がチラチラと顔を覆って太陽の光を遮ってくれる。今まではトキワの森の木々によって常に守られていたが、この調子だと少し焼けるだろうな。日焼け止め持ってないし。
鴨の親子のように後ろに三匹を引き連れて、家であるトキワの森を目指す。どの道を進めばいいのか分からないけれど、取り敢えずそれっぽい方向に向かって行けばオッケーだろう。間違えていればチカ達が教えてくれるだろうし。
そうやってこそこそと道を行けば、しばらくすると森が見えてきた。あれがトキワの森で合ってるよね?念のためチカにそう尋ねれば、うんと頷いた。正直そろそろ暑さに参ってしまいそうだったので、見えた我が家にホッとした。ようやくひんやりした森に帰れる。
ニイが登って来たので肩に乗せてあげ、やれ後少しだと足を進める。
「あ、ねえ、そこのお嬢さん」
横を歩いていたチカが後ろを振り返った。それにつられるように私も振り返る。
そこにはおばさんと呼ばれるくらいの年であろう女の人がいて、視線はこっちを向いていた。
…私?でも、ここには知り合いなんていないんだけど……。
訝しげに女の人を見る。と、チカが一声鳴いて駆け出した。え、チカ?
「まあ、覚えていてくれたのかい?」
「ピカチュ」
「あの子のためだったんだねえ。着てもらえて良かったじゃない」
「チャア」
なにやら親しげに話し掛けている女の人を見て、それから下にいるテイを見る。テイは首を傾げてチカの様子を見ていた。肩にいるニイも同様だ。どうやら、この二匹も知らないチカの知り合いのようだ。
知らない人なので話かけるわけにもいかず、チカと話す様子を見ていると、女の人はチカから目を離してこちらを向いた。
「はじめまして。私は服屋をやっていてね、自分で服を製作して売っているの」
「はあ、そうなんですか…」
「それでね、貴方が今来ているその服は、私が作ったものなのよ」
「へ、な、えええ!」
いきなりの爆弾発言に目を丸くして声をあげると、彼女は可笑しそうにクスクス笑った。
「身振り手振りで、展示してある子供用ピカチュウ服の大きいのが欲しいって言われてねえ。ポケモンのお客さんなんて初めてだったから、この子の言いたいことがなかなか分からなくて」
「……え、あの、お金はどうしたんですか?」
「ちゃんと代金は頂いたよ。珍しいお客様だから、少しおまけをしたけれど」
あれ、チカお金持ってたの?そもそもどうやって稼いだの?
沸き上がる疑問をチカにぶつけたかったが、万が一、スッたんだぜってことがあったら大変なので、ぐっと踏み止まった。
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