05
太陽が登っている。目を閉じていても感じる明るさを、覚醒しかけている脳で朝だと認識した。
少し重い瞼を上げると、見えるのはぼやけた世界。目を擦ろうと腕を動かすと、自分の体でない物に触れ、何かを抱えていることに気が付いた。ぼんやりした視界で下を向くと、小さな黄色い姿が二つ。
……あ、そっか。ピチューか。そういえばトリップ擬いなことになったんだっけ。ぐるりと辺りを見回せば、昨日いたはずのライチュウ達がいなくなっていた。一緒に寝たピカチュウも。
この子達がいるから置いてきぼりにされたわけではなさそうだけど、どこ行っちゃったんだろ。青々した草むらを見つめながら思案していると、腕の中でピチューがもぞもぞと動き始めた。だいぶはっきりしてきた視界にピチューを映す。寝ぼけているのか片方の子がもう一匹を押し退けて上へ上へと上がってこようとしながら、あくびをして目を擦っている。微笑ましくてじっと見ているとピチューと目が合った。
「…ちゅ?」
「おはよー、ピチュー」
頭をなでてやりながらにこりと笑う。ピチューは誰だこの人と思っていそうな顔だったけど、昨日のことを思い出したのか次第に親しみを持つ表情に変わった。おはようという挨拶なのかピチューはすりすりと擦り寄って来て、思わず力いっぱい抱きしめたくなったけど、もう一匹が気持ちよさそうに寝ているのを思い出してピチューを撫でくりまわすのみに踏み止まる。ピチューはおとなしく撫でられていたが、突然声をあげた。
「ピチュ!」
腕の中から抜け出して駆けて行くピチューを目で追うと、その先にはピカチュウ達がたくさんの木の実を抱えて帰って来ていた。朝食の調達に行ってたのか。ピンクに青にオレンジに緑にといっぱいある木の実。ピチューはライチュウからひとつもらって美味しそうに頬張っている。
いつまでも寝転んでいるのも何なので、抱えているピチューを起こさないようにゆっくりと起き上がった。
「…ぴ、ちゅ?」
極力起こさないように頑張ったけれど、眠りが浅くなっていたのかピチューはうっすらと瞼を上げた。このまま起きるかな?じっと見ているとピチューは目をパチパチさせてぼんやりとこっちを見上げた。
「おはよー?」
ぱちり、ぱちり。瞬きをくり返すピチューに反応はない。まだ半分ほど脳が寝ているようだ。
「ピカチュ?」
「うん。まだ起きてないみたい」
駆け寄ってきてピチューの顔を覗き込んだ後、私を見上げたピカチュウにそう返す。ぼうっとしているピチューを二人で見ていると、その間にもう一匹のピチューが食べかけの木の実を片手にやって来て、同じようにピチューの顔を覗き込んだ。そして、持っていた木の実を振りかざす。ぼんやりしていたピチューは鼻をひくひくさせてがぶりと木の実に噛り付いた。もぐもぐと口を動かすピチューの目ははっきりと木の実を映している。
「あ、起きた」
「ピカ」
噛り付かれた木の実を片手に、ピチューを起こした事を誇らしげにどんなもんだいと胸を張るピチューが微笑ましくもあり可笑しくもあり、ふと見たピカチュウと目が合って思わず吹き出した。
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