07



ちらちら光る木漏れ日を浴びながら森の中を歩いて行く。木漏れ日と言っても大したものじゃない。ほんと時々ちら、と光るだけ。森は薄暗く、鬱蒼と茂る草や木が延々と立ち並び、どこをどう通って来たのか方向感覚にそこそこ自信のある私でも分からない。ピカチュウ達がいなかったら絶対迷っていただろう。そして昨日、もしピカチュウと出会わなかったらと考えると……やっぱり考えたくない。少なくとも森を延々と彷徨って、もれなく行き倒れになっていたはずだ。
トレーナーカードもポケモンもお金も持っていなかったが、最低限の幸運は与えられていたらしい。うん、本当によかった。
てくてくと前を歩いていたピカチュウは、突然軽快な走りで近くの木に登った。肩に乗っていたピチューもぴょんと飛び降りてそれに続く。二匹を目で追っていると、ピカチュウが木からぶらさがっていた蔓みたいなものに掴まって、ターザンのように空中に踊り出た。そしてその先にある木の枝の上に見事着陸。ピチューもピカチュウの後に続き難なく渡った。
何ていうか、ここのピカチュウ達はすごい野生的だな…。それともこれが本来野生である時の姿?楽しそうに話しているピカチュウとピチューから目を離して、腕の中にいるピチューを見る。

「きみは行かないの?」
「ぴ?」

私を見上げて、ピチューは首を傾げた。そしてにぱっと笑って頷き、すりすりと擦り寄ってきた。
〈ピチューのあまえるこうげき!きゅうしょにあたった!こうかはばつぐんだ!〉そんな声が聞こえた気がした。

「あー可愛いなあもうきみは!」

うりゃーと額をぐりぐり押しつける。ピチューはきゃっきゃと笑っている。ああ私の癒し!一家に一匹ピチューだね。

「ピカチューウ」

ピチューの頭に顎を乗せたまま上を見ると、次の蔓を持ってこっちを見下ろしているピカチュウとピチューがいた。

「あ、ごめん。行っていいよ」

声をかけると二匹はまた別の木へと渡って行く。置いて行かれないように小走りでその後に付いて行った。けれど、ピカチュウ達はターザンごっこに夢中なようで、先へ先へと速いスピードで渡って行く。小走りを止めて普通に走るが二匹との距離は次第に開いていき、とうとう見えなくなってしまった。

「は、速っ」

追い付くのは無理だと諦めて立ち止まり、肩で息をする。久しぶりに本気で走った。部活を引退してから碌に運動してなかったせいだろう、体力の衰えを感じる。

「ね、ピチュー、帰り道、分かる?」
「ピチュ!」
「なら、いいや」

息切れで途切れ途切れになる言葉を紡ぎながら、ピカチュウ達はどこへ行きたかったんだろうと考えた。どこかへ連れて行ってくれるつもりだったのか、はたまた単にこうして遊ぶのに付き合えということだったのか。

「んー、取り敢えず皆のところへ戻ろうか」

ピカチュウ達どこかへ行っちゃったし、追い付ける自信はないし。ピチューも賛同してくれたので、くるりと踵を返した。その時。

「ピカァァア!!」
「ピヂュゥゥウ!!」
「あれ?」

振り向くとピカチュウとピチューが全速力で地面を蹴り、こっちへ向かっていた。どうしたんだろうと考え込む前に、ブーンという羽音と共に黄色い姿の虫が数匹、ピカチュウ達の後ろを飛んでいるのが分かった。
頭が事実を理解するよりも先に、足は来た道へと勝手に走りだした。




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