こんにちは異世界04

「一体君はどうしてそんな怪しい格好をしているのかね?」

 じろじろと不躾な視線を身に受け冷や汗が止まらない。なんて言い訳しようか…。考えてる暇などない。秋良はしどろもどろになりながらも口を開いた。

「あーえっと、あの、その僕…か、花粉症なんです!」

 帽子にマスクにサングラス。重装備なそれに理由を付けるとしたら花粉症くらいしか思いつかなかった。

「いやーこれがないともう鼻水やら涙やら咳やらが止まらなくて!!」

 ゴホゴホと咳き込んでみせるが、警備員からはまだ訝しげな表情が抜けない。眉間に皺を寄せている警備員が徐ろに手を差し出した。

「…それじゃあ身元が確認できるもの出して貰える?」

「えっ」

 ほら早くとばかりに手を差し出す警備員。まずい。これは不味すぎると秋良は焦った。

 身分証明書はある。事故った時に着ていたスーツのポケットに奇跡的に財布が入っていたから。そこに入っていたのは僅かながらのお金とカード類、そして紛うことなき自分の免許証だ。しかし免許証の写真は以前の自分。今のこの姿でその免許証を出しても余計に怪しまれるだけだ。本来の自分を証明出来る唯一の証拠。こればっかりは失う訳にはいかない。

「ええっとー」

 うまい言い訳をと考えていたその時、背後からあれれーっと幼い子どもの声が聞こえてきた。

「あーっ!やっぱり安室さんだー!どうしたの、そんなところで」

「へっ?」

 振り返ればそこには小学生くらいの男の子。大きな眼鏡が特徴の男の子は不思議そうな顔でW安室さんWを見上げている。

「こ、コナンくん急にどこに…って安室さん??」

 眼鏡の男の子はどうやらコナンくんと言うらしい。そしてその子のお姉さんだろうか。高校生くらいの女の子がまたもや秋良をみて安室さんと呼ぶ。

「…知り合いかい?」

「うんっ!毛利小五郎おじさんの弟子で、探偵さんをしながら事務所の一階にあるポアロってお店でアルバイトしてるいるよ」

 今も探偵のお仕事中?なんて可愛く小首を傾げるコナン。これ幸いと秋良はその話に乗っかる事にした。

「うん、そうなんだよねっ」

 探偵が何をするかなんてさっぱり分からない、なんて口が裂けても言えないが。

「…今の話本当?」

 警備員は隣にいた女子高生にも確認する。

「はい、彼は安室透さんっていう方で、父の探偵助手をしてるんです」

 ───安室さんはバイトしながら、この女子高生のお父さんの所で探偵助手とやらをしてるのか!

 秋良は新たな情報を手に入れ、心の中のメモ帳にしっかりと刻み込んだ。

「ふうん、そうかい…。君、今度はそんな紛らわしい格好でうろちょろするんでないよ」

「っ!は、はい!」

 漸く納得がいったようで、警備員はやれやれと肩を竦めながら立ち去っていった。

「───で、安室さん…どうしてそんな目立つ格好してるの?」

 誰をつけてたの、と言わんばかりの鋭い眼差し。あれ、さっきまでの可愛い小学生はどこに消えたのかなと秋良は口元をひくつかせた。

「あーいやー……僕、急いでるからまた今度ね!」

 助けてくれてありがとう見知らぬ少年!まあもう会うことはないと思うけどね、と心の中で唱えながら、秋良は半ば無理やりその場から立ち去った。

「うーん。なんか安室さん…いつもと様子が違ったね、コナンくん」

「…そうだね」

 人混みに紛れて消えるまで、コナンはいつもと様子の違う安室透…いや、秋良の背中を鋭い眼差しで睨んでいたのだった。


 

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