二人の降谷08
「…それで、本当に赤井には何もされてないんだな?」再度強く確認をすると、秋良はコクリと頷き肯定した。
「そうか…」
はぁぁぁぁぁ、と大きな溜め息を吐いて顔を手で覆う。秋良が無事で何よりだが、その前に何故安室透のセーフハウスがバレたのか洗い直す必要があるなと項垂れていた。
「引越しするかな…」
間取りやセキュリティ、場所的にもとても気に入っていただけに、赤井があっさりと住居を特定した事に大きなショックを隠せない降谷。
「ご、ごめんね。僕のせいで…」
「いや、秋良のせいじゃないよ。アイツは腐っててもFBIだからな。居場所くらい簡単に調べられたんだよ」
まあ、安室透名義のセーフハウスなので降谷零名義の自宅よりはセキュリティも甘いし、何より何がなんでも隠そうとしてきた訳ではないので、力あるものが探そうと思えば簡単に探せたのだ。だから仕方ないと言えば仕方ない。…ただ、物凄く悔しいが。でもただの私立探偵でアルバイターの安室透がガチガチのセキュリティにしてるのも違和感しかないので、結局の所W仕方なかったWのだ。
「家を知ったからって赤井に限って悪さをするとは思えないが…」
それでも居場所を掴まれているというのはなかなか居心地が悪い。しかしすぐ引越しするのも何だか負けた気がして気に食わない。どうするべきかと逡巡していると、秋良は少し考えた末にゆっくりと口を開いた。
「やっぱり僕家を出て───…」
「駄目だ」
全てを言い切る前に、降谷に一刀両断にされた秋良。
「出て行ってどうするんだ?今は確かに安室透の身分証があるが、部屋を借りるのも家具や家電を揃えるのにもお金はかかるしそもそも仕事はどうするんだ?まだ地理にも明るい訳でもないしこの辺りは治安だって良くない。それでも出て行くと言うのか?それを俺が許可すると思っているのか?」
一息に吐き出された言葉に、秋良は言葉を詰まらせる。確かにその通りだった。悔しいが言い返せない。秋良は表情を歪めた。
俯き悔しそうな顔をしている秋良を、降谷は優しく抱き締める。
ふわりと香る降谷の匂い。温かい体温に、秋良は息を飲んだ。
「──頼むから、俺のそばから離れないでくれ」
「ゼロ、くん…」
厄介者に違いないのに。きっと秋良がいなければ今回の事ももっとスムーズに進んだだろうし、余計な手間も掛からなかった筈だ。迷惑を掛けたくないのに。それなのに、いつも迷惑を掛けてばかり…。それが悔しくて悲しくて嫌だから離れたかったのに。それでも降谷は秋良の手を離さない。
「俺のそばにいてくれ…」
耳元で懇願する降谷の声がやけに弱々しく聞こえて…。秋良は瞳を泳がせ、迷った末にゆるりと降谷の背中に腕を回した。
「…そばにいるよ」
───貴方が僕を必要としなくなるまで…。