こんにちは異世界08
「ごめんなさいごめんなさいっ」「………」
やりすぎた。と思っても後の祭り。
突然人気の無い路地裏に連れてこられて壁ドンされたらそりゃ怯えて半泣きにもなるか、と安室こと降谷はふと思った。
いやしかし、ただ壁ドンしてすみませんでしたーとはなれない。何故自分と同じ顔をしているのか…。その理由を聞かない限り、その手を話すつもりなど毛頭なかった。
「お前は誰だ」
降谷は不機嫌そうに目の前の人物を見下ろす。
───本当に俺が二人居るみたいだ。
それ程までに似ている。若干、目の色が違うかもしれない。目の前の男の方が明るい色をしている。ざっと見た感じだと身長はほぼ同じ、顔つきや髪色、肌の色までほぼ同じとなるとどこかの誰かが俺を真似て変装しているのかと思うほどだった。
挙動や言動を聞いている限り、一般人のそれと変わらない気もするが如何せん見た目がアウトだ。いくら世の中に、自分と同じ顔の人間が3人いるという話があってもこれは似ているという範疇を超えている。
───確かにこんなに似ていれば、周りの人間は俺だと思うか…。
最近になって、見覚えのない目撃情報や会話などで度々混乱させられてきたが、それは全部目の前のこの男のせいなのかと納得した。
流石に、あのコナンくんに駅で不審な格好してたよね?なんて言われた日には笑顔が凍り付いてしまったほどだ。
───この俺が帽子にマスクにサングラスなんて不審者感丸出しの格好で出歩く訳ないだろうが!と言いそうになったのは記憶に新しい。
じぃっと目の前の男の挙動を観察していたら、泳ぎに泳ぎまくっていた青い瞳が申し訳なさそうにこちらを見詰めて来た。
「あの、その…僕の名前は観月秋良と申します…」
あんなに慌てふためいていた割にはあっさり名前を白状する男。それが本名なのか確認するべく、身分証明出来るものは?と促す。
「あっ、と…えっと、その…」
途端にしどろもどろになる男。なんだ、適当についた嘘だったのかと目をきつく細めれば、びくりと大袈裟なくらい肩を震わせながら男は口を開き始めた。
「いや、その…免許証はあるんです、けど…」
「…?ならそれを早く出せ」
「で、でも…それみたら尚更混乱するんじゃないかなーって思いまして…」
もごもごと歯切れの悪い。往生際の悪いそいつにいいから出せと語尾を強めて言えば、慌てた様子で財布を取り出し免許証らしきものをこちらに手渡した。
ただ、名前と顔を確認するつもりだった。くるりと免許証を反転させてそれを覗き込めば、全くの別人がそこに映っていて。
「……おい」
名前は確かに観月秋良と書いてあるが、それ以外の情報がまるでデタラメだ。聞いたこともない住所に、目の前にいる男とは似ても似つかない顔の優男がこちらをまっすぐ見据えていた。
染めたことも無いのだろう黒い濡れ羽色の髪は癖毛なのか所々ぴょこんと跳ねている。髪と同じく漆黒の瞳は優しい色を浮かべていて…。つまり、誰だこれ状態。
「どこから突っ込んでいいのか分からないが、取り敢えず…なんだこの偽物の免許証は!」