こんにちは異世界09

「偽物じゃないですよっ!!」

「はあ?嘘つくならマシな嘘つくんだな」

 作りや構造は本物そのものだが、表記されているものはデタラメだ。パッと見せられただけだったら気付けないかもしれないが、所々が可笑しいその免許証を手渡したのは間違いだったなと鼻で嘲笑う。

「ち、違います!それ本当に僕なんです」

 同じ顔なのに中身が違えばこうも違うのか。半泣きな秋良を見た降谷は表情を歪める。

「…だったらお前はなんだ。特殊メイクで変装でもしてるのか?」

「あだだだだだ」

 遠慮なくぐいぐいと頬っぺを引っ張るが何も起きない。ただ目の前の自分と同じ顔の男がさらに涙目になっただけだった。

「…作り物でもないか」

「自前ですよ!本当の顔でもないですけど…」

 ヒリヒリ痛む頬を抑えながら、秋良は目に見えて落ち込み始めた。

「事故って目が覚めたらこの顔にされてたんです…」

「…どういう事だ?」

「言葉通りですよ。トラックが突っ込んできて、あっコレ死んだなーって思ったら生きてて。でも、顔は全くの別人に作り替えられていたってだけです」

「………はあ?」

 突拍子のない話に、降谷は思わずぽかんと口を開ける。全く言っていることが理解出来ない。コイツ頭でも可笑しいんだろうかと、ジロジロと不躾な瞳を向けた。

「あっ信じてませんね!?でも本当なんですよ!僕だって好きでこの姿になった訳じゃないんですっ!!」

 この姿は本当に目立つし、すぐ色んな人に話し掛けられるし…。おちおち散歩にも出かけられないんですから!と、散々人を貶してくる秋良に、降谷の額に青筋が立った。

「…目立って悪かったな」

「あっ」

 秋良は漸く自分の失言に気付いたが時すでに遅し。口元をヒクヒクさせる降谷。それを見て秋良は慌ててフォローに入る。

「い、いえ、本当にこの顔は整ってるって言うか!歩いているだけでみんな振り返ってくるし、本当にイケメンなんだなーって思いました!知り合いに会ったらみんな頬を染めて見上げて来るし、笑顔なんて浮かべたら卒倒しそうな勢いですし!僕も毎日鏡越しでこの顔見てますけど、やっぱり凄い格好良いなと思います。全てのパーツがきちっと配置されて、誰が見てもイケメンっていう顔立ちですし。人気者過ぎて、神様は本当に不公平だなって心底思いました…ってアレ?」

 ひと息にこの顔を絶賛してみたのだが、なんだか降谷の様子が可笑しい。手のひらで顔を覆い、そっぽ向いている。チラッと見えたその耳が赤く染まっている事に気が付かぬまま、秋良はまだ足りなかったかと勝手に解釈し、再び絶賛しようと口を開いた…が。

「それに──っむが」

「…もう、いい…」

 口を抑えられもごもごとしている秋良をジト目で睨み付ける降谷。何も考えていなさそうな秋良の顔に、降谷は「コイツただの天然だ」と思ったのは無理もないことだった。


 

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