こんにちは異世界13

「………馬鹿な」

 そんな非現実的な事が有り得るのか。降谷は頭を振った。

「でも、貴方もこの不可解さに気付いているでしょう?この辺りでトラックと人間がぶつかったなんて事故は存在しないと」

「………」

 そう、そんな事故は存在しない。あればニュースになっている筈だ。それについては降谷も気付いていた。しかし…。

「じゃあトラックとの事故じゃなかったとかは?」

 有り得るとしたら、トラックとの事故ではなく何者かによる暴行等。記憶が錯誤している可能性は、と問い掛けるがまたもや広末は首を振る。

「それはない。私が手術したのよ?…あれは間違いなく衝突事故による損傷」

「だったら…!」

「そもそも、うちは塀に囲まれているの。正面からしか入れないのよ」

 ───それなのに、庭に突然湧いたの。

 その言葉が降谷の脳裏に重くのしかかる。

「…もし、信じられないなら、防犯カメラの映像を見せてあげる」

 それが、真実ならば。

「…見せて、ください」

 資産家の家だ。カメラの一つや二つはあるだろう。降谷はその映像を見せてもらう事にした。

 有り得ない現象に、納得のいく理由を付けたい。このざわめきの正体を見極めたい。降谷は覚悟を決めて二階へと向かった。そしてそこでとある日の防犯カメラの映像を見せてもらう。

 庭の一角を映すカメラ。通常ならば何も起こらない筈なのに。…それなのに。

「っ!」

 パッと突然現れた血塗れのそれ。見るも無残なその塊は、何とか人の形を保ってはいたが、腕は変な方向に曲がっているし、足は折れているようだった。顔面は血に濡れて判別不可能だったが、きっとこれが秋良の本当の姿…。

「っ、なんで、すぐに警察に連絡しなかったんですか?!」

「私だって医者の端くれ。生命が消え掛かってる時に悠長なこと出来ないわ。人命を優先して、それから…と最初は思ってたのよ」

 でも、手術途中に見付けた免許証に気付いて…。頭の中に浮かんだのは非科学的なものだった。

「有り得ないと思った。けど、これが現実だと、そうも思ったわ」

 きっと彼はここの世界の住人ではない。事故って何かの拍子にトリップしてきた、と。

「じゃなかったら説明がつかないのよ!こんな事有り得ない、けど、そうじゃなければ…」

 生命の灯火が消え掛かっている彼を見て、広末は思った。

「彼の生命を救えるのは私しかいない。いずれ、ここが別世界だと気付くかもしれない…。でも、それでも私だけは彼の味方でいようとそう思ったのよ」

 嘘偽りのない真っ直ぐな瞳を向けられて、降谷は少しだけ眩しそうに目を細めた。

「…そう、ですか」

 彼は知らず知らずのうちにここまで助けられていたのだ。見ず知らずの人なのに、どうしてここまで真っ直ぐなのだろうか。

 降谷は疑う事しかしらない。そうやって生きてきた。…でも、この人たちは違う。互いに、きっと信頼している。

 いっぱいいっぱいな頭のまま、口を開こうとした、その瞬間。

 ───ガサ。

 ビニール袋の擦れる音。ハッとしてそちらへ振り返ればそこには…。

「…っ誰!?」

「ごめ、なさい…盗み聞きするつもりは、無かったん…です、けど…」

 きい、っとドアを開ける音とともに、青ざめた表情をした秋良がそこに立っていた。


 

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