ぼくときみ03
さてさて、無事シャンプーの方は終わったが次は難関だ。「ゼロくん、身体洗うよ?」
「んー」
ボディソープを垂らしボディタオルを泡立てる。それを背中に当てるとゴシゴシと出来るだけ痛くないよう優しく擦った。
背中、首、腕、と擦って腕が止まる。
「…前、嫌がらないかな」
ゼロくんは今、鏡に向かって座っている。つまり前には僕が入るスペースが無い。
前を洗うためには、後ろから覆い被さるようにして洗うしか無いのだ。取り敢えず、こっち向いてと念の為声を掛けてみたがやはり気のない返事だけで動く気配が無い。これは、腹を括るしかないようだ。
「…なんか、申し訳なくなるなぁ」
男が男に覆い被さられて良い気はしないだろう。ふう、と小さな溜め息を吐くと、僕はそろりのお腹の方へ手を回した…次の瞬間。
───ガターン!!
「うぐっ!?」
ゼロくんの反応が早すぎて受け身が上手く取れなかった。
「……秋良?何してんのお前」
僕を床に押し倒しながらぽかんと口を開けるゼロくん。いやいやいや、それ僕のセリフですけども!?
「ぜ、ゼロくん…取り敢えず退いて…!」
全体重で床に縫い付けられていて、全く身動きが取れない。そんな僕のその上には、全身泡だらけで現状を理解してないだろうゼロくんが不思議そうな眼差しでこちらを見詰めていた。
「あー…?」
いそいそと僕の上から退いてくれたのは良いのだが、泡だらけのゼロくんが上にのしかかったので、もれなく僕もビシャビシャの泡だらけ。
「…ゼロくん、取り敢えず風邪引いたら困るから、身体洗ってお風呂に浸かって下さい」
それから僕もシャワーを浴びよう。この泡を洗い流さない限り浴室から出れない。
濡れてビシャビシャになったシャツを脱いでいると、その様子をぼんやり眺めていたゼロくんが、申し訳なさそうに口を開いた。
「あー…もしかして俺、寝てた?」
「ソウデスネ」
まさかゼロくんがここまで反射が良いとは…。普段どんだけ気を張って生きているかを思い知った。
「俺の背後取ろうとしたらダメだよ秋良」
「もっと早くにそれ知りたかった」
「………」
背後から腕を回した瞬間、ゼロくんに背後を取らせるかとばかりに床に縫い付けられてしまった。その状況を理解したゼロくんは、申し訳なさそうに頬をポリポリと掻いていた。