ぼくときみ04

 無事ゼロくんを浴槽に押し込み、僕も本日二度目のシャワーを浴びる。

 ザー────。

 シャワーで泡を洗い流していると、いつの間にか目が覚めたのか、ハッキリとした眼差しでこちらをじっと見るゼロくんがいた。

「…な、なに?」

 じーーーっと穴があくのではと言うくらい見詰められ戸惑う。僕は首を傾げながら、ちらりと表情を窺った。

「───いや、同じ顔でもやっぱり身体の造りは違うなって思って」

 浴槽の縁に腕を乗せ、そこに顔を乗っけているゼロくん。濡れた髪が張り付いていて、尚更幼く見える。

 それを見ながら僕は小さく笑みを零した。

「ふふっ、確かに。ゼロくんって服の上からじゃ分からないけど、腹筋すごい割れてるもんね」

 着痩せするタイプだね、と言えばお前もな、と返された。

「秋良も思ったよりかは腹筋あるんだな」

「そう?まあ一応合気道習ってたからかな」

 高校生時代にやっていた合気道。社会人になってからも運動がてら道場に顔を出していたから、無駄に贅肉が付くこともなくこの体型を維持出来ていた。

「へえ、合気道」

 意外、と呟くゼロくん。

「ゼロくんは?何か習い事でも?」

「…俺はボクシングだな」

 ボクシング。なるほど、それであの反射神経。

「───僕、殴られなくて本当に良かったよ」

「俺も、お前を殴らなくて本当に良かったよ」

 互いに冗談を言って笑い合う。何だかんだで二人の相性は悪くないらしく、まるで本当の兄弟みたいだなと思った。

「なんか、兄弟いたらこんな感じなのかな」

 一人っ子だったから、兄弟ってものをよく知らないけど、と笑うとゼロくんも俺もと言ってきた。

「…で、どっちが兄?」

「えっ、僕だよね?!僕の方がひとつ年上だし!」

「どうかな。秋良鈍臭いし」

「酷い!」

 確かにゼロくんに比べたら鈍臭いかもしれないけど、年上の威厳とは!?と、ぷくっと頬を膨らませていると、何だか眩しそうに目を細めているゼロくんが視界に入った。

「…でも、秋良みたいな兄さんなら、退屈しなくて済むかもな」

「何それ、どういう事?」

「はははっ!」

 顔をクシャッとさせて破顔するゼロくん。この時、初めて彼の本当の笑顔を見たような気がした。


 

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