メーデーメーデー!02
「………」沖矢昴こと、赤井秀一は考えていた。
今朝、コナンから届いたメールには、ポアロで働いてる安室透を見張って欲しいというものだった。
コナンが安室透を黒の組織と関係があると推理しているのは知っている。赤井もその時安室と一緒に行動していたので良く顔を覚えていた。
赤井はライとして。安室はバーボンとして。互いに疑いつつ一緒に行動したのは記憶に新しい。だからこそ安室透がバーボンだとは知っていたが、赤井は彼が敵側だとは思っていなかった。確たる証拠がないが、彼はきっと──…。
だから、コナンから安室透を見張ってとお願いされた時はなんでそんな事を…なんて思っていたが、確かに今日の安室透は変だ。
出会い頭の表情や行動。いつもはもっとW完璧な笑顔Wだ。彼は自分の魅力を最大に引き出す方法を知っている。どの角度で、どういう表情が相手にとって一番良く見えるか…。そういう計算された笑顔を向けてくるのに、今日の彼はどこか気の抜けたような…自然で柔らかい笑顔を向けて来たのだ。
それから今し方来店したお客が赤井だと気付いた時の表情の変化。ピシリ、と見事なまでに固まった。
これが通常の安室なら、例えW沖矢昴Wを怪しんでいてもスマートに席まで案内しただろう。だが今日の彼は…。顔全体に「やばい」と書いている。なんでここに来た、と言いたげな分かり易い表情に、赤井は少し笑いそうになってしまったくらいだ。
そして思ったのは、彼は安室透とは別人だということ。間違いなくいつもの安室透ではない。だとしたら…。
───彼は一体誰なんだ。
そこに疑問が残る。
見た目は安室透だ。特殊なマスクを使っている線もあるが、それを確かめるには触れてみるしかない。だが、偽安室透から警戒されている以上、下手に近付けはしないだろう。出来れば自然に触れ合えれば…と考えていた所に、注文していたコーヒーを彼が運んで来た。
「…お待たせしました」
「ああ、ありがとうございます」
コーヒーを置く手、近付いた顔をざっと見回したが、やはり見た目は完全に安室透だった。ただやはり、中身は別人のようだ。苦笑いを浮かべている彼にお礼を言うと、いえ、では失礼しますとそそくさと立ち去ってしまった。
いつもの安室透ではない分隙がありそうだが、その隙を突くためには警戒心を解いてもらう必要がある。ある程度ここに通い詰めて信用を得ていくのが確実か…。
特殊マスクなのか、否なのか…。マスクならまだしも、もし本当に同じ顔だとすれば、彼から安室透の真相を探る事が可能になる。
例えば一卵性の双子、とか。そうなれば、彼の素性を突き止めれば芋づる式に安室透の素性をも突き止められるだろう。
「───なるほど、興味深い」
これは長期戦になりそうだ、と赤井はニヤリと微笑んでいた。