メーデーメーデー!03
赤井はこれからの考えを頭の中で纏めながら、バイト中である秋良の事を静かに観察していた。初日から下手に行動を起こして接触するより長期戦で懐柔した方が良いと判断したからだ。
安室とは違い、秋良は一人一人に丁寧に接客している。確かに安室も丁寧な接客だが、自分にとって利益が無いと判断した人に対しては割とあっさりとした対応なのだ。付かず離れずで後を引かない対応。それが安室透である。
しかし秋良は、一人一人親身になって対応している。だからなのか。いつもならない筈のW安室透の隙Wを感じ取った女性からのアピールが、今日は一段と激しいように思えた。
流石に連絡先を聞かれても断ってはいたので、公私は分けているつもりなのだろう。ただ、人との距離はやはり近い。彼のパーソナルスペースの範囲が窺えた。
そんな秋良の警戒心をどうやって解くか。きっと一度警戒心を解いてしまえば、彼は簡単に相手を懐に入れてしまうだろう。そんな雰囲気がある。
何かきっかけがあれば…。と考えている赤井の元に、秋良とともに小さな影が現れた。
「昴さん!」
いつもより慌てた様子のコナンだ。どうやら学校が終わって急いでポアロまで来たらしい。
「コナンくん、学校お疲れ様」
パタンと本を閉じ、にこやかに挨拶をすれば、コナンはホッとした様子で赤井の向かいの席に腰を下ろした。
「コナンくん、何か飲むかい?」
「うーん……いつもの!」
その言葉の真意を理解出来たのはきっと赤井だけだろう。きょとり、と瞬きを繰り返した秋良は、その後かしこまりましたと笑顔で立ち去って行った。
「───昴さん、どう思う?」
「それは彼が、という事か?」
秋良が立ち去ってから二人の空気が一変した。真剣な表情で問い掛けるコナンに、赤井は済まし顔でコーヒーを口に含む。
「うん。あの人、本当にいつもの安室さんだと思う?」
「…答えはNOだ」
「やっぱり…」
何やら考え込むコナンを眺めていると、飲み物を手に秋良が現れた。
「はい、お待たせしました」
コトリ、とコナンの目の前に置かれたのはアイスコーヒー。その瞬間、二人の眼差しが鋭くなった。
「…あれ、違った?」
空気が変わった事に気付いたのか、少し慌てた様子の秋良にコナンは子どもらしい笑みを向ける。
「ううん、ありがとー安室さん」
そう笑い掛ければあからさまにホッとする秋良。じゃあね、とその場から立ち去ったのを見計らってから赤井は口を開いた。
「彼と安室くんは繋がっているようだな」
「…そうだね。じゃないと子どもにアイスコーヒーなんて出さないよ」
目の前に置かれたアイスコーヒー。中の氷が溶けてからりと音を立てた…。