メーデーメーデー!09
あれから沖矢さんと別れ、自宅まで何の問題もなく歩いて帰宅した。特に足音も視線も感じないので大丈夫だったのだろう。一先ず安心。ほっと胸を撫で下ろした。漸く着いたマンション。鍵を開けると、電気が付いている事に気が付く。玄関を見るとゼロくんの靴が揃えられて置いてあった。
「…もう帰ってきてたんだ。…あっ!」
大変だ。ご飯まだ作ってない。慌ててリビングに通じるドアを開けると、キッチンの方からいい匂いが漂ってくるのを感じた。
「お、やっと帰ってきたのか。おかえり」
ひょこっとキッチンから顔を覗かせたゼロくん。遅かったな、と言いながらフライパンを振っている様はまさにデキる男だ。かっこいい。
「ただいま。今日は早かったんだね」
いそいそと上着を脱ぎつつそう言えば、ゼロくんはまあなと頷く。
「秋良は遅かったな。どこかに寄ってたのか?今日のシフト18時までだったろ?」
ぎくり。身体が不自然に固まる。そうか、元々ゼロくんのバイトだったからシフトを把握してるのは当たり前だということを失念していた。やばい。
「…秋良?」
突然挙動不審になった僕を怪しむゼロくん。訝しげに名前を呼ぶ。
「あーっと、その…」
これは正直に話すべきなのか、否なのか。どちらにするべきか迷って視線を泳がせていると、いつの間にか料理の終えたのだろうゼロくんが僕に詰め寄って来ていた。
「お前、何隠してる?」
じっとこちらを窺うゼロくん。灰色がかった青い双眸が、嘘も誤魔化しも許さないぞと言っているかのようだった。
きっと誤魔化した所でゼロくんには通用しないだろう。僕は覚悟を決めて口を開いた。
「───ちょっと、カフェでお茶を…してきました」
嘘ではない。うん。本当の事だ。ちょっと色々端折っただけである。
「はあ?なんでカフェ。一人で行ってきたのか?」
───まあ、突っ込んで来ますよね!あ、そうなんだ、とはならないですよね!分かってました!
不思議そうな…訝しそうなゼロくんの顔を直視出来ず、僕はスッと視線を逸らした。
「…えっと、あー…二人。沖矢さんと」
「───沖矢…だと?」
その瞬間、ゼロくんの纏っていた空気がガラリと変わったような気がした。部屋の温度が2、3度下がったような気がする。
「…何でアイツとカフェに行ってるんだ?」
「や」
「いつの間にそんなに親しくなったんだ?」
「その」
「───秋良、答えろ」
「…はい」
淡々とした言葉。重々しい重圧を感じ、僕はどんどん肩身が狭くなる思いで口を開く。
「いやぁ…まあ、これにはちょっと理由がありまして…」
早く答えろ、と無言で視線だけで訴えてくるゼロくん。こ、怖いです。目がマジです。殺気立ってます…!
「す…」
「す?」
バクバクと早鐘のように脈打つ心臓。ええい。男は度胸、一思いに言ったれ、と僕は口を開いた。
「ストーカーにあったんです!」