メーデーメーデー!10
「沖矢昴にか!?」物凄い剣幕で僕の肩を力一杯掴んできたゼロくん。僕は慌てて首を横に振る。この勘違いは早く解かないと手遅れになる。そんな気がした。
「ち、違う!沖矢さんは助けてくれただけで、ストーカーしてきた人は別の人!」
危うく沖矢さんがストーカー認定されてゼロくんにやられてしまうところだった。危ない。
「別の人…って秋良、お前大丈夫だったのか?」
沖矢さんが犯人じゃないと分かって少しだけ落ち着いたのか、今度は僕の心配をしてくれるゼロくん。良かった…沖矢さんの生命の危機を脱する事が出来て。
「うん。ちょうど撒こうかなって思った時に沖矢さんとバッタリ会って、なんとか大丈夫だったよ」
「なんとかって…。どうしてすぐに連絡しなかったんだ!何かあってからじゃ遅いんだぞ」
「ごめん…。ただ、あの時本当に電話とか思い付かなくて…」
ただ必死だった。どうストーカーを撒こうか、どうしたら良いのか…。内心パニックだったのだ。
「…取り敢えず、何もなくて良かったけど…。今度そんな事があったらすぐに電話しろよ」
「うん、そうする」
「…で、結局犯人は分かってるのか?」
「んーそこは分かんないんだよね。ただ足音が軽かったから女性だとは思うんだけど…」
そう答えると、ゼロくんは顎に指を当てながら何やら考え込む。
「女性、ね。ポアロに来たお客さんかな」
「…やっぱりゼロくんもそう思う?」
沖矢さんにも言われたが、やはり見知らぬ人赤の他人ではなく、少しでも接触した事のある人物の方が可能性が高いらしい。
「お前と接点があるとすればポアロしかないだろうな。…ただ、俺の方という可能性もあるから何とも言えないが…」
うーん確かに。元々ポアロでバイトしてるゼロくんを知っててストーカーしてるということも考えうる。
「…ストーカーについては俺も調べてみるが…。どうする?暫く秋良は外に出ない方がいいんじゃないか?」
僕の身を案じてそう言ってくれたのだろう。でも僕はゆるゆると首を横に振った。
「でもそうするとまたゼロくんが忙しくなっちゃうでしょ?」
「俺は構わないよ。元々そうしてきたし」
「…ううん。やっぱり僕がいることでゼロくんが休めるなら休んだ方がいいよ。じゃないとゼロくん過労で倒れちゃう」
日本は過労死大国だ。仕事に追われすぎてぽっくり、なんて有り得ない話ではないのだ。特にこの目の前の彼に対しては。
「…俺はそこまでヤワじゃないぞ」
どこか不満気な表情のゼロくん。それでもやっぱり自分だけ隠れているなんて出来なかった。
「大丈夫。今度何かあったらすぐに連絡するし」
「…まあ、それなら良いけど…。無茶だけはするなよ」
いくら相手が女性でも、刺されたりなんかしたら一環の終わりだ。充分気を引き締めていかなければ。
「うん、頑張る!」
「…大丈夫かなぁ」
気合いも虚しく、ゼロくんからは心配と疑念の溜め息を頂きました。残念。