ついてない1日 03
あの後、空っぽの頭で考えたのは自分のマンションにある彼女の私物をどうするかだった。電車に揺られながら、あれやこれや思い出の数々を頭に浮かべては先程の情景を思い出し頭を降る。
…例え、やり直そうと言われてもこればっかりはもう無理だな。
今まで喧嘩は幾度となくしてきても仲直り出来たが、心が悲鳴を上げている今、彼女を許そうという気分にはなれない。
「…ふう」
優子から送られてきたメールには謝罪の言葉と僕への気持ちが綴られていたが、僕は返信すること無くそっと携帯をポケットにしまい込んだ。
今日は厄日だったのだろう。朝から嫌な事ばかり続き心が病みそうになる。僕は嫌な事ばかり考えてしまう脳を遮断すべく、降りる駅までの僅かな間、静かに目を閉じて暗闇を受け入れた。
───駅のアナウンスが聞こえる。
寝過ごす事無く降車し、マンションへの道を暗い表情のまま歩き出す。
空は僕と同じく暗く重い空気を漂わせている。いつ降ってもおかしくないな、なんて思っていたらぽつり、と地面に水滴が吸い込まれていった。
「ああ、雨か…」
勿論傘など持っていない。普段ならコンビニでも立ち寄ってビニール傘のひとつでも買う所だがそんな気分にもなれず、濡れるのも厭わず歩き出した。
最初は小雨だったそれも、徐々に雨脚は強くなる一方で、濡れて張り付く前髪を鬱陶しく思いながらも惨めな自分に小さく嘲笑った。
「あーあ、ほんと、嫌になるな…」
点滅する青信号。あと残り僅かで渡りきれると思ったその時。
劈くようなタイヤの音とクラクション。驚愕の表情を浮かべる通行人。───そして、タイヤを滑らせ眼前に迫り来る大型トラック。
「ほんと、ついていない…」
どん、という大きな衝撃と共に僕は意識を失った。