ニューフェイス01
身体に走った痛みに唸りながら薄く目を開くと、真っ白に光る蛍光灯が目に入った。「う……あ、れ…?」
声が変だ。ぼんやりとする頭で思った事は、風邪でも引いたかな、だった。違和感しかない声を不思議に思いながらも目線だけで周りを見渡せば、見たことも無い殺風景な部屋のベッドで寝ていたという事に気付く。
「どこだろう、ここ…」
見たことも無い知らない部屋。部屋にあるのは申し訳程度の家具と本棚。ドアのみで窓のない変な部屋。時計もなく今の時間が朝なのか夜なのかも分からない。…そう言えば、寝る前の記憶があやふやだ。
「ええと、確か朝から寝坊して…」
そう、寝坊から始まった1日。あの日、痴漢に間違われたり会社で笑い者にされ、8年も付き合った彼女に浮気されていて落ち込んで、雨が降ってきてそれから、それから…。
「目の前にトラックが…───っ!?」
そうだ、雨でタイヤを取られたトラックが僕に突っ込んで来て大きな衝撃を受けたのを覚えている。
身体がバラバラに引き裂かれたかのような痛み。ふわっと浮いた身体。意識がそこで途切れて…それから?
「生きてたのか、僕は…」
実感が湧かなくてだるい身体に鞭を打って起き上がると、腕に繋がれているチューブの存在に気が付いた。
「点滴…」
やはり、ここは病院かどこかなのだろう。部屋は変だが、よくよく見ると身体のあちこちからチューブやらコードやらが伸びている。
「…それにしても」
ふと目に入った自分の腕。決して色白では無かったが、こんなに日焼けしていただろうか。褐色の肌を不思議に思いながらも痛む頭を押さえると、視界にちらりと金色が映りこんだ。
サラリと流れる黄金。サラサラと滑るように動くそれに指を這わせてみた。
「金髪…」
あれ、僕は生まれてこの方髪を染めたことなんて無かった筈では?
頭の中の情報と視界に映る情報が噛み合わず混乱する。
そもそも声もおかしい。聞き慣れない音が自分の口から出ている事自体変ではないのだろうか。
「か、鏡は…」
慌てて鏡を探すが見当たらない。嫌な予感が頭をよぎる。
コードやチューブが身体から外れるのも気にせずドアに向かって歩き出す。力が上手く入らず何度か転げてしまったが、今は自身に起きている事を確認するのが第一だった。
半ば這いずるようにドアまで移動し、ドアノブに手を掛けた瞬間、捻っていないのにも関わらずグッと引っ張られる感覚を得た。
「っ!」
思わず身を固くしドアの先を見詰める。
「───あら、漸くお目覚めかしら?」
ゆっくりと引かれたドアの先には1人の女性が、意外そうな顔で此方の様子を窺っていた。