メーデーメーデー!13
ブブブ、とポケットに入れていた携帯電話が震えた。「ん、と…───電話…?」
画面を見ればそこにはゼロくんの名前。沖矢さんに断りを入れてから電話に出ると、やけに低いテンションのゼロくんの声が聞こえて来た。
『…まだカフェに居るのか?』
「うん。そっちは終わったの?」
『ああ。身元も分かったし取り敢えず今日の所は撤収してきた。…そこに沖矢昴いるんだろ?』
「うん、まあ…」
目の前に沖矢さんがいるため下手は事は言えない。もにょもにょと濁してそう言えば、電話越しに舌打ちが聞こえてきて思わず肩が跳ねてしまった。
『…取り敢えず、もう大丈夫だからそっちに迎えに行く』
「…んん?それ大丈夫なの?」
チラッと沖矢さんも見ると、のほほんとした顔でコーヒーを味わっている。
『鉢合わせは不味いから…そうだな、その近くに公園あるだろ?そこで待ち合わせるか』
「ああ、あそこね。了解」
すぐそこにある公園を頭に思い浮かべながら了承する。
『それじゃあまた後で』
「はーい」
ぽちりと通話終了のボタンをタップし、携帯電話をポケットにしまうとタイミングを見計らったかのように沖矢さんが声を掛けて来た。
「…今のは仕事仲間からですか?」
仕事仲間、とはもしかして探偵の事だろうか。実際はゼロくん一人でやってるがまあ一応僕も仲間みたいなものかと納得し頷く。
「その様なものですね」
「ほぉー。お一人でやられてるのかと思ってましたが、そうではないんですね」
「まあ色々手を貸してくれる人もいるんですよ」
現に、ゼロくんが探偵業をしているとき、誰かに何かを頼んでたりするのである程度人脈があるとみていた。確かなことは分からないので下手な事は言えないけれども。
にっこり微笑んで残りのアイスティーを飲み干すと、それじゃあ僕はこれで帰りますね。と声を掛ける。
「そうですか。僕は暫くここで時間を潰していきます」
「分かりました。今日もお付き合い頂きありがとうございました。おかげで助かりました」
今日のカフェ代は僕が持とう。伝票をサッと持ち上げ支払いに行こうとすると、沖矢さんが僕の手をしっかりと掴んで歩みを止めた。
「自分で支払いますよ」
「いえ、いつも助けて頂いてるのでそのお礼です。気にしないで下さい」
「しかし…」
別に何もしてないですし、と渋る沖矢さんに笑いかける。
「じゃあ今度、お酒でも飲みに行った時に1杯奢ってください」
ぱちん、と茶目っ気たっぷりにウインクすると、沖矢さんは珍しくきょとんとした表情で僕を見詰める。それから柔らかい表情で分かりましたと言うとお礼を述べて僕の手を離してくれた。
「では、沖矢さんまた今度」
「…ええ、また」