メーデーメーデー!14
夜の公園。木々が風で揺れてさざめく様子をぼんやり眺めながら、街灯下のベンチに腰掛け降谷の到着を待つ。昼間は活気に溢れているだろうこの場所も、夜になると本当に静かだ。稀に犬の散歩をしている人や、仕事帰りの会社員が通るくらいでそれ以外は人気を感じない。
それでも不思議と怖さはなかった。街灯の数はそれなりにあって真っ暗闇ではないし、少し離れた大通りからの喧騒も僅かながら聞こえてくるので無音でもない。程よい静けさがこの辺りを包み込んでいるようだった。
暫くぼうっと座って待っていると、突然背後から何者かが近付いてくる足音が聞こえてきた。秋良は音の聞こえる方へ首を回すと、暗闇から帽子にマスクを完備した男が近寄って来るのが窺えた。近付くにつれ顕になる容姿。キャスケットから覗く金色に気付いた秋良は顔を綻ばせた。
「おかえり。お疲れ様」
「………」
労りの声を掛けたが、目の前の彼からは何の反応もない。不思議に思って小首を傾げると、口元に人差し指を立てて「静かに」と小さくジェスチャーをする降谷。
秋良はそれに倣って口を噤むと、降谷はひとつ頷いた末に唐突に秋良の身体をベタベタと触り出した。
「!?」
何が何だか分からぬまま、秋良はされるがままに降谷のボディチェックを受ける。上から下までしっかり検査したのち、降谷は漸く安心したようでマスクを外して一息ついた。
「大丈夫そうだな。もう喋っていいぞ」
「え、これって何だったの!?」
全く理由が分からず目を瞬かせて降谷の様子を窺う秋良。降谷は当たり前とでも言うかのように盗聴器チェック、と言い放った。
「盗聴器!?なんで、そんなの…」
「お前、あの沖矢昴といたんだろ?盗聴器の一つや二つ仕掛けられてもおかしくないだろう」
「えっ!?」
降谷の中の沖矢のイメージと、秋良の中の沖矢のイメージが完全に食い違っていると思わせる瞬間であった。
「沖矢さんそんな事しないと思うけど…」
確かに何を考えているかは分からないが、温和そうな好青年なイメージの秋良。しかし降谷は全く違った。
「胡散臭い男だろうが。急に現れて…違和感しか感じない」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべているのは、沖矢昴の身辺調査が芳しくないからだろうか。苦々しい表情のまま、降谷は口を開く。
「本来ならアイツと秋良が会うのも嫌なんだ。アイツは…何か変だ」
「変、って…。僕は特に何にも感じないけど…」
まあ稀に探られている感は否めないけど、とは口には出さなかった。