メーデーメーデー!16
結局、結論が出ないまま二人で自宅まで歩いて帰宅した。帰って来てからはご飯を二人で作り、それをしっかり食べてからお風呂に入って、髪を乾かし合う。歯磨きもして明日の予定も確認して、後はもう寝るだけだ、となったのだが…。いつもなら別れる寝室までの道のり。けれど今日はいつもと違っていた。
「えーと、ゼロくん…?」
背中にぴったりくっ付いて離れない降谷に、秋良は困ったように眉を下げる。
「そろそろ寝ないと明日起きれなくなっちゃうよ?」
「うん」
分かってるのか分かってないのか…。よく分からない声音のまま返事はしてくれるが、背中から退いてくれる気配はなかった。
「ゼロくーん?」
肩に乗っかっている頭をぽふぽふ撫でていると、不意に腰に巻き付いていた腕が強くなった。
「…?」
困ったような表情のまま降谷の動向を窺っていると、背中からくぐもった声が聞こえてきた。
「…一緒寝るか」
「へっ!?」
急に何を言い出すんだと素っ頓狂な声を上げる秋良。それに構わず降谷は言葉を続けた。
「ダメ?」
未だかつてこんなに可愛くおねだりしてきた事はあっただろうか。秋良はうぐ、と小さく呻き声を上げながら口を開いた。
「…一緒に寝るって言っても、僕の部屋のベッド狭いけど」
流石にセミロングだとは言え、大の大人二人で寝るのはきつい。そう伝えたのだが、降谷は知ったことかとばかりにグイグイ秋良を押して前に進んで行く。
「ちょ、ちょっとちょっと!?」
いつにも増して押しが強い。どうして今日はこんなに甘えたを発動しているのだろう。
「ねむたい」
「いや、まあ僕も眠たいけども」
「だからねよう」
淡々と当たり前のようにそう言葉を紡ぐ降谷に、一度頷きかけるが違う違うと頭を振った。
「だからね、僕のベッドは狭いって…」
「じゃあおれのベッドにしよう」
「え!?」
そこまでしても一緒に寝たいのか。秋良は目をまんまるくしながらも、降谷に押されていつもは立ち入りを制限されている部屋に足を踏み入れた。
「ちょ、ちょっと!?いいの?僕がこの部屋に入っても」
「いいよ、秋良なら」
ふわあっと大きな欠伸を零しながら、何でもないふうに降谷は言う。それにすら驚いて目を瞬かせていると、その隙に自室にあるものより大きなベッドに寝転ばされた。
「ふえっ!?」
「もうむりねむたい、ねる…」
「待って待って!せめて布団被ろう!?」
「…うー」
のそのそ動いて取り敢えず布団の中には入ってくれたが、秋良はこの状況に頭が付いていけていなかった。何故こうなったと考えながら、隣で爆睡する降谷をまじまじと見詰める。
髪の毛と同じ色の長い睫毛。ふさふさなそれは世の中の女子が羨む程だ。小さな寝息を立てるその顔は穏やかで、目を開けている時よりもずっと彼を幼く見させた。
いつも気を張って過ごしている分、家に帰ってくると反動的に気が緩むのだろう。秋良はいつも頑張っている降谷を労わるように何度か頭を撫でてあげてから、自身も目を閉じてゆっくりと睡魔に身を任せた。