メーデーメーデー!22

 騒ぎの元…佐藤夏子が立ち去った後のポアロでは、一瞬の静寂の後、弾けるように女性客の黄色い声が上がった。

「キャーーー!うそうそうそ!安室さんと沖矢さんってそーゆー関係だったの!?」

 黄色い声代表の園子の言葉に、秋良は素っ頓狂な声を上げた。

「ち、違う!違いますから!」

 目の前で手をバタバタ振って否定するが、今し方起きたそれを見ていた彼女らにはただの照れ隠しにしか見えない。特に、秋良が茹で蛸の如く顔を真っ赤にさせている事もその要因のひとつだろう。

「大丈夫です!私たちぜんっぜんそういうのに偏見とかないですから!」

 蘭による謎の慰めも秋良からしたらただのダメージでしかない。大丈夫という言葉が大丈夫じゃない、と秋良は思った。

 これは早めに誤解を解かないと収拾がつかなくなる。秋良はどうにかしようと口を開くが…。

「ほ、本当に、嘘じゃなくて…!」

「もぉー、照れなくていいんですよ、安室さんっ」

「ちがっ…!もうっ沖矢さんからも何か言って下さいよっ」

 キャッキャッと騒ぐ女子高生達に、秋良はもう涙目である。咄嗟の機転に助けられたが、この騒ぎの元凶でもある沖矢に助けを求めるが、ふむ…と考え深げに秋良を見詰めるだけで特別何も言わなかった。

「沖矢さんー??」

 沖矢は沖矢で、何やら考え込んでいる。時折じろじろと秋良の顔を見ては、何を考えているか分からない表情を浮かべ何やら思案していた。

 その様子を目敏く見付けた園子は、バシバシと秋良の背中を叩きながらにやけた口を開く。

「やだー、安室さんってば旦那に助けを求めるのー?」

「だ、旦那っ!?」

 園子のその言葉に秋良は言葉を失った。駄目だ。これでは何やっても裏目にしか出ない。

「え、沖矢さん旦那なの?」

「旦那でしょー?どう考えてもさっきの雰囲気なら安室さんは嫁って感じだし」

「なるほど、確かに」

 蘭と園子の会話に、ひくりと頬が引き攣った。よもや彼女が出来る前に男の旦那が自分に出来るとは。考えもしなかったそれに、秋良は目に見えて落ち込んでいたが、周りはそんな事お構い無しだ。

 味方らしい味方がいなくて、秋良は「ああああ…」と顔を抑えながら項垂れるしかなった。

 ちなみにこの日から、周りからは生温い視線と、応援しています…とか眼福です、ありがとうございますなんていう謎の言葉や感謝を受ける羽目になるとは、この時思いもしなかった秋良であった。


 

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