ニューフェイス02
「取り敢えず、そこ退いて貰える?」邪魔よ。と、湯気の立つマグカップを手に言い放つ見知らぬ女性。白衣に身を包み、知的な眼鏡をしている彼女は、やや不機嫌そうにクイッと片方の眉を釣り上げた。
「早くしなさい」
「は、はい!」
鋭い声色に条件反射で返事をすると、壁に張り付くようにして道をあけた。そこを当然のように堂々と通る女性。
「…何をしているの?早くベッドに戻りなさいよ」
「ひゃいっ!」
力の限り這いずりながらベッドまで戻った。
「まず、自己紹介といこうか。私は末広千代美。医者よ」
近くにあった椅子に腰掛けながら、彼女はひと口マグカップに入っていたコーヒーを口に含んだ。ふう、と一息ついている広末さん。
「そして貴方は…?」
「あ、僕は観月秋良です」
「───そう、いい名前ね。…さて、貴方も色々思う事があるでしょうけど、取り敢えずそうね…」
じろじろと此方を見定める広末さん。此方も様子を窺うように広末さんを見詰めた。
年齢は20代後半くらいだろうか。化粧っ気のない顔に黒い髪を乱雑に1本に後ろで纏めている。つり目気味の瞳はやや焦げ茶色っぽい。意思の強そうなその瞳を見詰めていると、考えが纏まったらしい彼女の口から言葉が紡がれていった。
「んー…まず、鏡で自分の姿を確認して貰いましょうか」
はい、と手渡された手鏡。漸くこの違和感を確認する事が出来る。
「あっありがとうございます」
その言葉と共に鏡を覗き込めば、見知らぬイケメンが此方をきょとんと覗き込んでいた。
まず目に入ったのはその瞳。日本人には有り得ない澄んだブルー。光の角度でキラキラ輝く不思議な色合いだ…。
そして次に目に付いたのは、金色に輝くサラサラの髪。キューティクルが眩しい。
最後にやっぱり…腕と同じく健康的な褐色の肌。どこで日に焼けて来たんだろう。しかし、どこか幼さの残るその顔は誰が見てもイケメンの部類に入れるだろう。ちょこっと微笑めば、世の中の女性はこの顔にコロッとやられるんだろうな。
「………」
よし、取り敢えず一言いいだろうか。
「誰!?」