夢だと言ってくれ04

「う、わーーーーーっ!!!!?」

 バタン!と勢いよく閉じられたそれ。園子はにんまり顔のまま、丁重に扱ってよねと言い放つ。

「な、な、なっ!?」

 ギギギ、と音がしそうなぎこちない動きで顔を園子に向けるが、当の本人はケラケラと楽しそうに笑うだけ。

 その様子を不思議そうに眺める沖矢であったが、蘭はその中身が何なのか知っているらしく頬を赤く染め俯いていた。

「な、なん、何なんです、コレ!?」

 火を噴きそうなくらい真っ赤になったまま、秋良は園子に詰め寄る。

「ふっふーん。中々の出来でしょ?」

「な、何言ってるんですか!?こ、こんな、こんなのっ…!?」

 ブルブル羞恥で震える秋良。ここまでずっと置いてけぼりの沖矢は、未だ秋良の手元にあるそのノートの背表紙をただじーっと眺める事しか出来ない。

「僕には見せて頂けないんですか?」

 何が書かれているのかまだ知らない沖矢は、何でもないふうにそう言葉を紡ぎ出したのだが、それに猛反対したのは秋良だった。

「だ、ダメダメダメ!!!絶対、ダメです!!」

 沖矢さんは絶対ダメ!と真っ赤な顔から今度は真っ青になる秋良。余程見られたくない内容のようだ、と沖矢は思った。

「…ふむ。ダメ、と言われると余計見たくなるのが人間でしてね」

「っえ!?」

 素早い手つきでそのノートを取り上げると、秋良の顔に絶望が広がった。

「お、沖矢さん!?」

 反射的に取り返そうと腕を伸ばしてくる秋良をさらりと躱し、サッとノートを開いて…───見事に固まった。



「…おや、まあ……これは、なんと言うか…」

 パラパラと適当に流し見ていると、どうやらこれは漫画のようだった。しかしただの漫画ではない。何故なら…。

「どう?沖矢さん。なかなか良い感じの喘ぎっぷりでしょ?」

 ドヤ顔満開の園子。それもその筈。そこに描かれていたのは…。

「これは、僕と…安室さん、ですか?」

 見事なまでの肌色。所謂BL本、と言うやつなのだろう。それもR指定がつく。

 しかも、沖矢と秋良…いや、外見的には安室、と言った方が正しいか。その二人の見事なまでのベッドシーン。ベッドで乱れまくる安室に乗っかかる沖矢。自分達をモデルに作られたその薄い本に、ポーカーフェイスが崩れそうになる。

 彼のベッドシーンなんて見た事もないが、ノートの中の安室は随分とまあ卑猥な言葉をポンポン繰り返していた。それに対して沖矢はなんという鬼の所業。射精管理、なんて恐ろしいことこの上ない。それを笑顔でやってのけるドS…いや、鬼畜眼鏡。沖矢は頬が引き攣るのを感じた。


 

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