夢だと言ってくれ05
「それ、うちの高校で今流行ってるんです」ぽぽぽ、と頬を染めながら口を開いた蘭。沖矢と秋良はその話に耳を傾ける。
「この間いたあの女子高生、うちの高校の先輩で。なんでも漫画研究部の人だったらしいんですけど…」
「沖矢さんと安室さんのラブラブっぷりを見てピーンと来たワケ!で、創作意欲が湧いたらしく出来上がったのがそのBL本」
蘭の後にそう言葉を続けた園子の言葉に開いた口が塞がらない。
「え、それ、あの子が…描いたんです、か?」
未だ沖矢の手にあるノートを指差し戦慄く秋良に、園子はにんまり頷き口を開いた。
「ピンポーン!」
その言葉に、秋良は顔に絶望の色を広げた。
「な、なんて事だ…」
本来なら清く正しく美しい高校生活を送っているはずの彼女が、その場凌ぎの為の沖矢と秋良のキスシーンを見てこんな道に足を踏み出してしまったとは…。いたいけな女子高生の運命を捻じ曲げてしまったのかと項垂れるしかない。
「ああ…」
目に見えて落ち込む秋良に、蘭と園子は互いに顔を見合わせた。
「いや、安室さん。なんと言うか…先輩、とっても生き生きしてましたよ?」
「そうそう。もう創作意欲が止まらないーって。なんでこんな素敵な男と男の花園を知らなかったんだろうって、寧ろ悔しがってたしねー」
「花園…」
その言葉に、秋良は完全に意気消沈しカウンターに突っ伏した。そして、これはもう軌道修正不可能なやつ!と諦めの境地に陥るのであった。
一方沖矢は…。
「ふむ、成程。所謂これがW腐女子Wと言うやつですね」
ポン、と手を打ちながら飄々とそんな事を言っていた。全くダメージを受けた様子もない。いつもとなんら変わらない表情で、何でもないふうに口を開く沖矢。そんな彼に秋良はダメージ受けすぎて弱り過ぎた瞳を向けた。
「…なんです、それ?」
ふじょし、とは何なのか。秋良にとって未知の世界のワードに、何故か色々知っている物知り沖矢の解説が始まった。
「腐女子とは、漢字で書くとW腐った女子Wなんですが、何でも男性同士の恋愛…ボーイズラブが好きな女性って意味らしいですね」
「えっ、そんな言葉があるって事は結構そういう方がいるって事ですか?」
「まあ、最近は割とオープンに自分は腐女子だと公言する方もいらっしゃるようですよ」
「そうなんだ…」
沖矢の言葉に秋良は考え込む。W腐女子Wとは此方の世界だけのものなのか、前の世界にもあったのか。元々そういう話題に詳しくないので分からないが、今この世界にそういう文化があるなら受け入れるしかない。…まあ、納得出来るかは別だが。
「そっか、それで結構周りの女性達が騒いで…」
世の中、腐女子と呼ばれる人種が意外と多いことに気が付いた瞬間だった。