束の間の安寧02

「それじゃあ行ってきます」

「気を付けて、行ってらっしゃい!」

 朝、ポアロにバイトに行くゼロくんを見送った後、僕は家の掃除に取り掛かった。

 洗濯機を回し、掃除機をかけ、トイレ掃除をする。それからお風呂掃除やキッチンの水周りを念入りに掃除。今日はお昼から先生の所に顔を出す予定なので、午前中のうちに掃除が終われるようにテキパキと行動していた。

 掃除を終えた頃に丁度回り終わった洗濯物を洗濯機から取り出して畳み始める。乾燥機付きの洗濯機なので、取り出した洗濯物はホカホカと暖かくしっかり乾いている。シャツなどにはアイロンもしっかりかけてシワひとつ無いように気を付けた。

 スーツなど洗濯出来ない物は今日のうちにクリーニングに出しに行くつもりだ。忘れずに持っていくために、紙袋に入れてテーブルの上に出して置く。

 先生の所に寄ってから、近所のスーパーに買い物に行こう。昨日は洋食だったから今日は中華にしようか。海老チリ、小籠包…なんてメニューを色々考えながら身支度をする。

 基本的に服装はゼロくんが用意した物を着ている。僕なんかよりも遥かにセンスが良いので大助かりだ。昔の僕なら、薄いとはいえピンク色のシャツなんて着ることは無かった。違和感を与えること無く着こなす事が出来るので、本当にこの身体はつくづくイケメンに作られていると思う。羨ましい限りである。

 身支度を終え、最後にキャスケットを被り黒縁メガネとマスクを装着する。まずゼロくんに鉢合わせる事は無いと思うが、知り合いに会う可能性は否定出来ない。ポアロで働いている筈の安室透が、別の場所に居た…なんて噂されたらとんでもない事件だ。何としてもバレ無いようにしないと。

 それでなくともこの姿はとても目立つ。元々細身で身長もあったが、そこにプラスアルファでイケメンのベビーフェイス。それだけで冴えない男だった僕がこうも見違えるのだから、顔面偏差値の効果は偉大である。すごい。

 まあその綺麗な顔を今日は隠して過ごさなければならないので、少し勿体無い気はするが仕方ない。これも平穏の為である。

 財布と携帯電話を持ち、テーブルに出していた紙袋を手に取り玄関へと向かう。ゼロくんはとてもお洒落さんなので靴の種類もとても豊富で高価なものも多い。今日は普通のスニーカーでいいか、と靴箱から取り出すとそれを履いて外に出た。

 今日の天気は一日晴れという予報だったので傘も要らないだろう。忘れずに鍵を閉め、それから僕は先生の元へと行くべくゆっくりと歩き出した。

 ───その時、ポアロではとんでもない事が起きているとは、この時露ほども思っていなかったのであった…。


 

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