零度の微笑み02
注文であるアイスコーヒーを準備し終えた安室は、次にこれをどうするかと考えていた。さっさと渡すのが吉なのか、それともWいつものようにWお喋りでもした方が良いのか。
そもそも本来であれば、身近な人以外にそんな長話はしない主義なのだ。下手に探られたり気に入られるのを良しとしない性格なので、人との距離間はしっかりと保っている方だった。それなのに…。
───秋良は簡単に人に懐くから…!
そもそもの原因である秋良のせいで、いつの間にか安室透はお喋り好きの人懐っこい青年へと化していた。それが悪いとは言わないが、面倒なのはかわりない。安室は人知れずひとつ小さな溜め息を吐いた。
「…じゃあ梓さん、これ持っていきますね」
「はーい。お願いします」
考えても仕方ない。なるようになるさ。と、半ば諦めの境地でアイスコーヒーを手に沖矢の元へ歩き出した。
「お待たせしました」
目の前に差し出したアイスコーヒー。中の氷がくるりと回ってカランと小さな音を立てた。
「ありがとうございます」
平然と受け取った沖矢。安室は無駄に突っかかりたくなる衝動を何とか抑え、兎に角早くここから抜け出そうと、くるりと背を向けた瞬間、店内に来店を知らせるベルが鳴り響いた。
「いらっしゃいませ」
反射的にそう口を開いた安室だったが、中に入ってきた人物を確認した瞬間ひくりと口元が引き攣るのを感じた。
「あっ、安室さんに昴さん。こんにちはー」
にっこり微笑みながら入ってきたのは、眼鏡を掛けた小さな少年…コナンだった。
厄介な所に現れたな、と思いながらも安室はすぐさま表情を変えコナンに話し掛ける。
「こんにちはコナンくん。今日は学校お休みなのかい?」
小首を傾げながらそう問い掛けると、コナンはそうなんだーっと笑顔を向けて来た。
「学校の開校記念日なんだって。だから蘭ねえちゃんもいないから、ここにお昼ご飯食べに来たの」
「そうなんだ。…あれ、じゃあ毛利先生は?事務所にいないのかい?」
開校記念日で休みなのは分かったが、それなら小五郎が家にいるのではと思い、安室は少しだけ探りを入れようと疑問を口にする。するとコナンはやや呆れたような表情のまま、ゆるりと首を横に振った。
「おじさんは今日何だか用事があるって言って朝から居ないんだ」
「そうだったんだね。後から顔を出そうと思ってたんだけど…いないなら仕方ないね」
コナンの表情を見る限り、きっと仕事で席を外しているのではなく、また麻雀仲間と昼間から麻雀してるか何かなのだろう。安室は少しだけコナンに同情の視線を送る。
「取り敢えず、好きな席について。コナンくんは何が食べたい?」
好きな席に座る事を促すと、これまた飛びっきりの笑顔を向けながらコナンは口を開いた。
「ボク、昴さんの隣がいいな!」