零度の微笑み03

 安室はハムサンドを作りながら、人知れずまたひとつ小さな溜め息を吐いていた。

 コナンがやって来た所まではまだ良い。しかしその彼がわざわざ沖矢の隣に座ると言い出すとは思わなかったのだ。これではまたこの料理を出しに行く時に顔を合わせる羽目になってしまう。安室は小さな唸り声を上げた。

 ───別に喧嘩したい訳じゃ無いのに、なんかあの顔見てると突っかかりたくなってしまうんだよな…。

 なんと言うか…心が受け付けない。生理的に無理、とはこの事なのだろう。安室は仲良く話に花を咲かせている二人をちらりと横目に、再び小さな溜め息を吐くのであった。







「どうぞ、お待たせしました」

 安室はなるべく視界に沖矢を入れないようにしながら、コナンの目の前にハムサンドとアイスコーヒーを置いた。

「ありがとう、安室さん。いただきます!」

 小学生らしく笑顔を浮かべ、サンドイッチを頬張る姿はとてもほんわかする。もぐもぐと咀嚼する姿は、事件の度に真剣な顔で突っ込んでくるそれとは違い、本来の小学生らしさを感じると安室は思った。

「どう、美味しいかい?」

 沖矢は完全スルーでコナンにニコニコ声を掛けると、笑顔で肯定されて安室も嬉しそうに微笑み返した。

「安室さんの作るハムサンドって、他の人とは一味違ってとても美味しいよ。何か隠し味でもあるの?」

 純粋な疑問だったのだろう。何が入っているのだろうと首を傾げるコナンに、安室はくすりと笑を零した。

「ふふふ、何が入ってるか分かったら凄いなぁ」

「うーん…何だろう?」

 味わいながら食べているコナン。何が入ってるか分かったら本当に凄いと安室は思った。何故なら、これは安室が考えたのではないから。料理上手な秋良が作ったメニューなのだ。初めて自分で食べた時も隠し味が全然分からなくてすぐに白旗を上げた。そんな彼に、秋良はすごく嬉しそうに、そして惜しみなく隠し味…味噌の存在を教えてくれた時は本当に驚いたものだ。

 ───まさか味噌だとは普通思わないよなぁ…。

 隠し味も作り方も惜しみなく教えてくれた秋良。美味しい物はみんなと共有したいよね、と笑った顔は今でも忘れないだろう。

 そんな隠し味が施されたハムサンドを、秋良はいつの間にかポアロで提供してたのにはまた驚いたが、人の喜ぶ顔を見るのが好きな彼だからと納得したのも記憶に新しい。美味しい物を美味しいと食べてくれる事に幸せを感じると言っていたのは秋良の本心なのだろう。だから彼の作る料理はとても美味しいし、何度でも食べたくなるのだ。それこそ独占したくなるくらいに…。

「うーーーん、難しくて分かんないや」

 悩みに悩み抜いた末に降参したコナンに、安室はまたひとつ微笑みを零した。


 

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