フラグ回収です02

 ──どうしてこうなったんだろう。と秋良は隣でハンドルを握る沖矢を横目に考えていた。

 沖矢の愛車である赤色のスバル360の助手席に座らされ、目的地も伝えられぬままどこかに向かって走ってる。迷いのないハンドル捌きから、沖矢の中では目的地が決まっているのだろう。一体どこに連れて行かれるか不安で仕方なかった。

 暫く道沿いに走っていたかと思えば、途中で住宅街へと曲がる。色とりどりの屋根を見詰めながら、秋良はちらりと沖矢を盗み見た。

 何食わぬ顔で運転する沖矢。この人も大概ポーカーフェイスだよなぁと途方に暮れる。もっと表情豊かな人であれば分かり易かったのに、と。車内に流れる洋楽が無ければ息の詰まる静けさで泣いていたかもしれない。秋良はそっと息を吐き出した。

 暫く走っていたと思ったら、やけに大きい洋館みたいな風貌の家の前で車が泊まった。

「着きましたよ」

「えっ、あ、はい」

 沖矢の言葉で目的地に着いた事は分かったが、果たしてここは何処なのか…。助手席から降りながら秋良は首を捻った。誰かの家…なのだろう。こんな立派なお家なら住宅ローンはどれくらいになるんだろうか。きっと、物凄い金額なのだろうな、とくだらない事を考えていたら、車を車庫に仕舞い終えた沖矢さんが声を掛けてきた。

「心配しなくてもここは僕が今住んでいる家ですよ。…さあ、お入り下さい」

「…はい」

 招かれてしまった以上入らない訳にはいかない。ぐっと拳を握り締め、覚悟を決めて足を踏み入れた。






 家の内装は、洋風な外見に見合ったとてもお洒落な造りをしていた。調度品ひとつひとつに選び抜かれたセンスを感じる。ふかふかなソファーに腰を下ろし辺りの様子を窺っていたら、どうやらコーヒーを入れていたらしい沖矢さんが二人分のコーヒーを手に戻ってきた。

「落ち着かないですね。大丈夫ですよ。別に取って食う訳じゃないですから」

 どうぞ、と目の前に置かれたコーヒーからは湯気が立っている。いただきます、と断りを入れて喉を潤すと、何度もカフェでお茶して秋良の好みも分かっているからか、ミルク入りのそれはとても舌に合って美味しかった。

 これがただのお茶会ならもっとリラックスしてコーヒーの味を楽しめたのに。でも、ここに連れて来られた理由はそんなものでは無いと秋良は理解していた。だから先手を打つ。

「…それで、一体何が聞きたいんですか?」

 自分から話すことは何も無い。聞かれたら答え合わせくらいはしてやろうと強気な視線を沖矢に送ると、目の前の彼は口端を吊り上げ楽しそうに喉を鳴らした。

「そんなに警戒しないで頂きたいのですが…。そうですね…では、お話させて頂きましょうか。例えば…──入れ替わりトリックについて、とか」

 そうして会話の火蓋が落とされた。


 

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