フラグ回収です05
「さて沖矢さん、ここからが本題なんですけど」「はい?」
何かあっただろうか。小首を傾げ続きを促すと、やけに真剣な顔をした秋良がぐいっと身を乗り出して沖矢に迫った。
「この事、透には秘密にして欲しいんです」
「…理由をお聞きしても?」
元来、もう一人の安室透に話すつもりは無かったが、こう下手に出てくれるのであればそれを利用する価値はある。沖矢は顎に指を添えながら話を促した。
「ああ見えて透は凄く…いや、めちゃくちゃ…うん、かなり心配性と言いますか。事あることに僕の心配ばかりするんです」
「はあ、それはそれは…」
───まあ安室君でなくとも、ふわふわとどこか飛んでいってしまいそうな君を俺も心配だがな、とは言わなかった。まあ言えるはずもない。
秋良はそのまま話を続けた。
「特に何故か分からないですけど、沖矢さんに対してはあの…その…き、キス…されてから、警戒しているというか、なんと言うか…」
「ああ…」
───そうか、だから今日あんなに殺意の篭った目を向けられたのか…。と顔には出さずにひとり納得する。
そうやってまた恥ずかしそうに頬を染めている姿に、沖矢が加虐心にも似た気持ちを抱くとは思っていないのだろうか。自分がこんなにSっ気があった事に驚く。
いや、なんと言うか…好きな子を虐めるいじめっ子の気持ちが今なら分かる気がしたのだ。少しだが。
「こうして二人っきりで会った…しかもバレたと知られた日には、透がここに押し掛けて来そうで…」
「…ふむ、なるほど」
沖矢とて今、彼に身元を探られる訳にはいかない。何せ彼はバーボンだ。その事実は揺るがないし、例えもしかしたらNOCかも知れないと頭の隅で思っていても、今の所彼の身元を探る証拠が無かった。見事に隠され偽造された経歴に感服したのは記憶に新しい。
もしかしたら秋良を通して何か分かるかも知れないというのは今でも思っているし、安室透抜きにしても沖矢は秋良の事をそれなりに気に入ってはいるのだ。
このまま秘密裏に密会するのも悪くない、と沖矢はひっそり微笑んだ。
「秋良さんの言い分は分かりました。では僕は彼にこの事を言わない。貴方は彼に僕の事を言わない。…そういう事でよろしいですか?」
「はい」
良かった、と全身で安心し切っている秋良に沖矢は笑みを向ける。
「つまり今日から僕と貴方は共犯者。裏切りは許されないですよ?」
互いに秘密を守る。今の所沖矢は密会をバラされても何も痛くはないが、秋良は違う。これを機にもっと親密な仲になれれば互いに情報が得られる確率はぐんと上がる。
果たしてそれが吉と出るか凶と出るか。
沖矢はうっそりと笑みを浮かべたのだった…。