フラグ回収です06

「…ただいまー」

 玄関の鍵を開け靴を脱いでいると、急にリビングに繋がるドアが勢いよく開け放たれた。

「遅い」

 どこで道草食ってたんだ、とばかりにムスッとしているゼロくん登場。僕は誤魔化すようにへらりと笑みを浮かべた。

「あーっと、ごめんね、先生と長話しちゃって…。それから買い物してたらこんな時間になっちゃった」

 がさりと買い物袋を掲げて見せると、ひょいと眉を上げてからゼロくんは手を差し出した。

「持ってく」

「えっ、いいよ大丈夫。重たいし…」

 結構色々買ってしまったのでそこそこ重くなったそれ。遠慮して大丈夫だと言ったのだが、ゼロくんはサッと素早い手つきでそれを取り上げると冷蔵庫に入れてくると言って足早にキッチンへと向かって行ってしまった。

「…うーん、流石ゼロくん。男前だなぁ」

 これで僕が女の子ならばそれはもうときめいたのだろう。なんて優しいの、みたいな。さり気ない気遣いが出来る男はやっぱりモテるんだろうな、としみじみ思いながらゼロくんの後を追ってキッチンへと向かった。

「今日、何作るの?」

 食材を冷蔵庫にしまいながら尋ねてくるゼロくんに、僕は本日のメニューを伝える。

「海老チリと、ツナと小松菜のナムルと、後は…ミニトマトとナスの中華スープにしようかな」

「へぇー今日は中華か」

「うん。苦手だった?」

「いや、好きだよ」

 そんな他愛ない会話をしながら冷蔵庫に物をしまっていたらあっという間に終わった。時間的にまだ夕食を作るのには早い時間だ。お米の準備だけ済ませて、二人分のコーヒーを入れてリビングに戻ると、ふかふかの3人がけのソファーにだらりと寝そべっているゼロくんがいた。

 ローテーブルにコーヒーをひとつ置き、ぽんぽんとゼロくんの頭を軽く撫でる。今日もお疲れ様です。

「コーヒー、飲む?」

「……飲む」

 起き上がったゼロくんにコーヒーを手渡して、自分もテーブルに置いていたコーヒーを持ち上げた。

「そう言えば今日、どうだった?」

 ふうふう息を掛けて冷ましながら何気なく尋ねれば、途端に顰めっ面になるゼロくんの顔。

「え、何かあったの?」

 沖矢さんから聞いた話では特に何も無かったように感じたのに…と考えながらゼロくんの様子を窺っていると、むっすりとしたゼロくんと目が合った。

「…沖矢昴が来た」

「………あー」

 なるほど。それだけでも嫌な出来事だったのか。一人納得して苦笑いを浮かべる。

「相変わらずすまし顔で何考えてるか分かんない男だった。さっさと帰ったからまだ良かったけど」

 まるでお茶を啜るかのようにずずーっと音を立ててコーヒーを飲むゼロくん。彼と沖矢さんの相性は本当に最悪なんだなぁと遠い目をする。これで今日、沖矢さんにバレて会っていたなんて知られた日にはどうなるのだろうと戦々恐々としたのは仕方ないと思う。

「ところで秋良」

「はいっ?!」

 急に変わった雲行きに、じり、と後退りする。…なんか、怒っている?

「お前、普段どんな風にアイツと話してるんだよ。普通に客として接客したのに、梓さんに心配されたんだけど」

 じろりと睨まれ固まった。

「えー…いやー…僕も普通に接客してたつもり、なんだけどなぁ」

 意外と会話好きな沖矢さんだから、ついつい話し込んでしまうのが悪いのか…。うーん、と考えていたら、ゼロくんが問答無用!とばかりに僕にヘッドロックを掛けてきた。

「いだだだだだ」

 きっちり首に回した腕を程よい力加減で絞めてくるゼロくん。流石男の子、プロレスの技って小さな頃よくやったよね!わかる、憧れたもの。でも、それを僕に披露するのはやめて欲しいな!

「お前は隙がありすぎる!」

 だから付け入られるんだ、と注意された。……うん、それは分かったんだけど、現在進行形で技かけられててとっても苦しいんだけどなー。と心の中で涙を流した僕でした。


 

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