敵か味方か05

 小学校教師、澁谷夏子を意識不明の重体にした犯人を追い詰めた時、学校に彼女の容態が悪化したとの連絡が入った。それを聞いて慌ててジョディ達は病院に向かう。

 その後を追うように安室も病院に向かい、駐車場に自分の車を停めた。

 ───バタン、そう音を立ててドアが閉まったのを聞きながら、安室は悠々と病院を見上げた。

「…何しに来た。もう用はないだろう」

 丁度運転席から降りたキャメルが、そんな安室に向かってそう言い放つ。安室はどこか怪しげな表情を浮かべながら飄々と言葉を紡ぎ出した。

「一応、彼女は僕のクライアントなんでね」

「フン」

 白々しい言い方だ。クライアントだから来ただけだと言うが果たしてそれは本心からなのか…。キャメルは忌々しげに鼻を鳴らすと身を翻し病院に入って行こうとする。…が、その前に安室の言葉に足が止まった。

「それに…──キミならうっかり口を滑らせてくれそうだから」








 ジョディ達が澁谷夏子の病室で話している中、キャメルと安室は未だに外にいた。そして安室から掛けられた問い掛けに、キャメルは肩を竦めて見せる。

「───楠田陸道…?知らないな、そんな奴」

「ここの病院の入院患者で、この近くで車を乗り捨てて姿を消した男ですよ。…何でも拳銃が絡んでいる、とか」

 キャメルの表情の変化を窺いながら、安室は何でもないふうにそう尋ねる。

「お仲間から聞いていませんか?」

「……さあね」

 それでもやはり現役捜査官。簡単には口を滑らせない。安室はにやりと口角を釣り上げた。

「ああ、そうか。キミのような下っ端捜査官には降りてこない情報って訳ですね」

 わざと煽るような言い方をする安室。その物言いに案の定カチンときたキャメルが言い返そうと振り返った。

「何言ってんだ。我々は常に情報を共有して…」

「キャメル!」

 ぐい、と力いっぱい引かれた腕。見ると焦ったような表情をしたジョディがキャメルの腕に自身の腕を絡ませていた。

「もうっ何やってんの!私から離れないでよ!」

「あ、ああ…」

 しどろもどろになりながらジョディに引っ張られ病院内に入り込む。その後ろ姿を見ながら安室は舌打ちをひとつ零すと身を翻して立ち去って行った。それを確認してから、漸くホッと息を吐くジョディ。それからキャメルを見上げ囁いた。

「──あの男に楠田の事喋ってないでしょうね?」

 キャメルが口を滑らせていないか。その確認だ。キャメルは自信たっぷりに頷くと口を開いた。

「勿論ですよ。奴が車の中で拳銃自殺しただなんて事、口が裂けても漏らしたりはしません」

 その瞬間、ジョディの口元に広がった笑みには気付けなかったのだろう。気付いていれば、何か変わっていたかもしれないのに。

「──そう、ありがと」

 するりと外された腕。キャメルは無くなった温もりにも気付かず再び口を開いた。

「ま、自分が日本に派遣される前の話で、自分も赤井さんから聞いたんですけどね」

 そしてパッと振り返って息を飲んだ。

「…っ?ジョディさん?何処です?ジョディさん!?」

 さっきまで確かに隣にいたはずの姿が、音もなくいつの間にか忽然と消えていた。


 

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