敵か味方か08

 ───時は遡り、来葉峠にて───




 ひゅうひゅうと苦しそうな呼吸を繰り返す赤井の目の前には、組織の一員…水無怜奈ことキールが拳銃を構えて立っていた。

『どうしたキール。早くとどめを刺せ』

 イヤホンから聞こえてくるジンの冷え切った声に、キールは少し眉をひそめながらも反応を示す。

『でも肺を撃ち抜いたから放って置いても後30分程度で…』

『頭だ』

『!?』

 放って置いても死ぬ。そう言おうとしたが最後まで言わせず、ジンは冷酷な笑みを浮かべながら命令をすした。

『頭に弾丸をぶち込め。それでソイツの息の根は完全に停止する』

 確実に息の根を止めろ。そう言わんばかりのセリフに、キールはふっと笑を零した。

『了解』

 そして未だ荒い呼吸を繰り返す赤井に向かって近付き、再び銃を構えた。…寸分の狂いもなく、頭を狙って。




「そしてあの男、頭を撃たれる前にこう呟いたのよ」

 その時の映像を頭に思い浮かべながらベルモットは言葉を続けた。

『ふん、まさかここまでとは』

『私も驚いたわ』

 銃を向けるキールと逃げ場のない赤井。そして、確実に息の根を止めるためにキールは引き金を引いた。

 頭を撃ち抜いた上に車ごと遺体に火をつけて立ち去った。…そして日本の警察が身元を赤井秀一と認め、FBIもそれを認めたのだ。




「一応女優の立場から言わせて貰うけど、あれは示し合わせたセリフじゃなく、心の底から出た言葉。演技じゃないわ」

 まさかここまでとはな。その言葉は心の底から驚いたと言う色を宿していた。

「───でもガッカリよ。こんな茶番に付き合わされていたなんて」

 赤井が死んでいると確信しているからこそ、今日の楠田陸道の件に付き合わされた事が無意味に思えて仕方がなかった。

 ベルモットは確信している。赤井秀一は死んでいると。…でも、バーボンは違った。

「ふっ。WまさかここまでとはなW」

 ───まさか、ここまでとはな。

 心の底から出た言葉。赤井が何を思ってそう言ったのか。普通に捉えるなら、自分の最期を悟っての言葉に聞こえる。でも、バーボンはそうは思わなかった。

 ───まさかここまで、とはな…。

 頭の中で思い浮かべた道筋に、人知れずにやりと笑が零れ落ちた。

「なるほど、そう言う事か」

 訝しげな瞳を受けながらも、バーボンはふっと笑ってみせる。

「ま、証明して見せますよ。僕の推理が合っているかどうか。ぐうの音も出ない状況に追い込んでね」

 証拠を掴んで逃げられないように徹底的に追い込む。バーボンの得意分野だ。

 その言葉にベルモットは楽しそうに声を上げた。

「あら、一応居場所は掴んでるのね?」

「いや、それはまだですが」

 嘘だ。本当は目星をつけてある。───沖矢昴。彼が怪しい、と。ただ、まだ確実な証拠がない。ぐうの音も出ないくらい追い込むのなら、徹底的に調べあげなければならないのだ。

 バーボンはギアをチェンジしスピードを上げた。

「タネが分かればソレを調べる事なんて僕にとっては一日あればお釣りがきますよ」

 鬱蒼と笑うバーボン。確実に追い詰めるために、頭の中でシュミレーションが始まった…。


 

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