敵か味方か09
紅茶を用意しゆったりとした足取りでリビングへ入る。『───では、まずは助演男優賞から…』
用意した紅茶をテーブルに置き、テレビから流れるマカデミー賞授与式の映像を見ていると、不意に玄関のインターホンが鳴った。
沖矢は腰掛けていたソファーから腰を上げ、インターホンの通話ボタンを押す。
「はい」
『宅配便です』
すぐさま返ってきた言葉に返事をし玄関へ向かうと、沖矢はいつも通りの落ち着いた様子でドアを開け放った。
「こんばんは。安室透です。少し話がしたいんですが中に入っても構いませんか?」
そこにいたのは最近お世話になっている喫茶店の店員…安室透。宅急便では?と思ったのも束の間、閑散とした住宅街に似合わない不穏な人影に気付き沖矢はゆるりと微笑んだ。
「ええ。貴方一人なら。…申し訳ありませんが、外で待たれているお連れの方達は御遠慮願います」
ついと見渡せば家の側に横付けされている車と、外に立っている男達。彼らを目敏く見付けた沖矢はそのまま言葉を続けた。
「───お出しするティーカップの数が足りそうに無いので」
あくまで、穏便に。不穏な空気を一切出さずにそう言えば、目の前の安室が怪しげに笑みを零した。
「気にしないで下さい。彼らは外で待つのが好きなので。…でも貴方の返答次第で全員お邪魔するハメになるかも知れませんけどね」
───一方その頃、ジョディとキャメルの方では…。
「え?来葉峠?赤井さんが奴らに殺された場所に今から行くんですか?」
助手席にジョディを乗せ、ハンドルを握るキャメルは驚いたような顔でジョディにそう問い掛けていた。
こんな時間から来葉峠…。そう、キャメルが尊敬する赤井秀一が組織の一員であるキールに射殺され、車ごと焼かれた場所へ何故行けと言うのか。戸惑いの表情を浮かべていると、ジョディは何やら考え込んだまま小さく口を開いた。
「ええ。行けば何か掴める気がするのよ」
───そう、楠田が拳銃自殺した事が知られた時のあの表情。そして花見の事件の時の狼狽えぶり…。絶対何かある。何かある!
コナンが何故あんなにも病院で狼狽えていたのか。楠田なんて正直自殺がバレたところでそんな痛手では無いはずなのに。なのに何故バーボンに知られたと分かった瞬間、あそこまで表情を変えたのか…。
絶対に何かカラクリがある。来葉峠に行けば何か、掴める気がするのだ。
ジョディはその何かを確かめるべくキャメルに来葉峠へ向かうように指示したのだ。
「来葉峠へ行ってちょうだい」
「分かりました」
キャメルはジョディが何を考えてそう言ったのか理解出来ないまま、それでもジョディを信じてアクセルを踏み込んだ。