敵か味方か13
───同時刻、来葉峠にて───「───少し、飛ばしますよ」
「ええ?!」
「後ろから妙な車が付けてきているんで」
背後から近寄る不審な車に気付き、キャメルはアクセルを踏む力を強めた。徐々にスピードの上がる車。後ろを振り切るように物凄いスピードでカーブを抜ける。
「───それで、その後の赤井さんはどこで何を…?心当たりのある人とかいないんですか?口癖が赤井さんと同じとか…」
「口癖…」
「ほら、赤井さん良く言ってたじゃないですか。W50/50だからお互い様だWとか」
「っ!!」
その瞬間、頭に浮かんだのはある男の顔。赤井とは似ても似つかない眼鏡を掛けた優男…。
「ああっ!」
いた。そう、前に会ったことあるではないか!!
「彼よ彼!!」
「ええっ!?」
「前に話したでしょう?」
「米花百貨店でぶつかった妙な眼鏡の男のこと!」
眼鏡を掛けたどこか胡散臭さすら感じる細めの優男。脳裏に浮かんだその男が、赤井の口癖を言っていた事を思い出していた。
その頃、安室は頬杖を付きながら余裕綽々な表情で沖矢を見据えていた。
「そこから先は簡単でした。来葉峠の一件後、その少年の周りに突然現れた不審人物を探すだけ。そしてここへ辿り着いたという訳です」
「ふむ…」
「あの少年とこの家の家主の工藤優作がどういう関係かはまだ分かっていませんが、貴方があの少年のお陰でここに住ませて貰っているのは確かなようだ」
コトリ。安室はテーブルに自身の携帯電話を置いた。
「…連絡待ちです。現在、私の連れが貴方のお仲間を拘束すべく追跡中。流石の貴方もお仲間の生死がかかれば素直になってくれると思いまして。でも、出来れば連絡が来る前にそのマスクを取ってくれませんかねぇ。沖矢昴さん?───いや、FBI捜査官…赤井秀一」
確信に満ちた声。増悪すら含むその声に反応するように、沖矢はゆるりと口を開いた。
「…君がそれを望むのなら、仕方ない」
「ふん。それはありがたい」
「───何のつもりだ」
マスク…そう、言葉通り口元を覆っていたマスクを外した沖矢に安室は苛立たしげな声を掛ける。沖矢は口元に手をやりながら2度ほど咳き込み口を開いた。
「少々風邪気味なので…マスクをしても良いですか?───君に移すといけない」
「そのマスクじゃない。その変装を解けと言っているんだ!赤井秀一」
激昴する安室に対して未だ余裕のある表情の沖矢。何のことだと言わんばかりのすっとぼけた顔で小首を傾げて見せた。
「変装…赤井秀一…。さっきから一体何の話です?」