敵か味方か15

 安室は隠しカメラに目を向けながら不機嫌そうに声を出した。

「一体何を企んでいる?」

「…企む、とは?」

 沖矢ははずしていたマスクを付け直し、何事も無かったかのように飄々とした様子で安室に尋ねた。表情の変化や呼気の乱れは見られない。安室は少し不満そうに眉を上げた。

「ざっと見た感じだが…玄関先に2台、廊下に3台、そしてこの部屋には5台の隠しカメラが設置されているようだ。この様子を録画してFBIにでも送る気か?それとも、別の部屋にいる誰かがこの様子を見ているのかな?」

 にんまり見せ付けるようにカメラに向って微笑んで見せるが、沖矢はどこ吹く風で飄々と話を逸らす。

「そもそも、僕と似ているんですか?顔とか声とか」

 話を逸らされた事に若干の苛立ちを感じつつも、沖矢のもっともな問い掛けに素直に答えてみせた。

「──ふん、顔は変装。声は変声機」

「変声機…」

 声を変える機械。それを付けているのだろう、と暗に言っている安室を沖矢はただ静かに見詰めていた。

「今日の昼間、この近辺を回ってリサーチしたんです。隣人である阿笠博士の発明品で評判が良かったのに急に販売を止めたものはないか、ってね。それはチョーカー型変声機。首に巻けば喉の振動を利用して自在に声を変えられて、ストーカーの迷惑電話には役立ち……そう、大きさは丁度そのハイネックで」

 沖矢の首元…ハイネックを掴む。

「隠れるくらいなんだよ…!」


 ぐっ、と下げたハイネックから覗いたのは……。

「───っな…!?」

 息を飲んで離れる。何も無い、普通の男の首元。安室は目を見開き動揺を隠しきれず狼狽えた。





「…くそ、タイヤのエアーがもう…」

 すぐ背後まで差し迫っていている車に、キャメルの顔が強ばる。両隣に車を付けられ、最早これまでか…と絶望の色に染まった顔に、ジョディも悲痛な声を上げた。

「もう…だめっ…」

 両隣、後ろ…。逃がさないとばかりにピタリと付けられもう終わりだと覚悟を決めた時、聞こえるはずの無い声が背後から聞こえてきたのだ。

「屋根を開けろ」

「っ!?」

「っえ!?」

 こんな所で聞こえるはずの無い声。まさか夢か幻かと思ったのも束の間、再び男のゆったりとした声が車内に響く。

「開けるんだ、キャメル」

「は、はいっ!!」

 ボタンを押し車の屋根を開け放つ。オープンカーになったその車の後に乗っていたのはいるはずの無い男…──赤井秀一だった。


「シュウ!?」

「ぁあ赤井しゃん!?」


 驚いたようなジョディの声と驚き過ぎて裏返ったキャメルの声に反応しないまま、赤井は付けてきている車に視線を向けた。

 それに反応したのは横付けしていた車の中にいた人間だった。

「っ赤井秀一!?」

「一体どういう…!?」

 思いもよらなかった事態に動揺が走る。

「お、おい車を下げろ!!指示を仰がないと…!」

 想定していなかった事態に、ジョディ達を付け狙っていた人物達は車から距離を保ち下がって見せた。





 一方、工藤邸では…。

「あの、電話鳴ってますけど」

 動揺が隠しきれない安室に、先程置いた携帯電話が着信を知らせ鳴り響いていた。ハッと息を吸い携帯電話を手に取ると、通話ボタンをタップした。

「どうした?遅かったな。───えっ?」

 途端顔色を変える。

「あ、赤井が!?」


 

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